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泣きむしハナ 泣かなかった(東野ひろあき)

今生きているという幸せ

泣きむしハナ 泣かなかった
東野ひろあき(文) 川﨑あっこ(絵)
先月の大阪府北部地震で、被災された方々にお見舞い申し上げます。

関西ですから、幸い被害がなかった方々におかれましても、きっと阪神・淡路の記憶が蘇って怖い思いをされた方も多いのではないかなと思います。堺に暮らす私も、そのうちの一人だったりしています。

さて話題が少し逸れますが、当店には小さな展示ルームがありまして、たまに絵本の原画展をおこないます。展示する作品は、子供たちを楽しませるためのもの、大人も子供も楽しめるもの、あるいは、大人にこそ楽しんでもらいたいものと、様々です。

ちょうど今月11日から当店で開催の絵本原画展は、女性にもおすすめですので、今月の作品としてご紹介したいと思います。そして、よろしければ原画展の会期中にぜひご来店いただけたら嬉しいな、とも思います。今月29日までです。

ハナは、ないてばかりの子猫です。おなかはすいていなくても、かあさんがそばにいても、ないてばかりいます。

ある日のお昼寝中、突然の大地震に見舞われたことで周囲の景色は一変し、気がつくとハナはひとりぼっちになっていました。

この作品は、2011年の東日本大震災をきっかけに製作された作品です。発行されたのは震災から数か月後の、同年7月7日とのこと。

当時は、未曾有の大災害に、地震による混乱を実際に経験した人ほど実感を持って、「これは大変だ、とにかく何かできることをしなくちゃ」と考えずにはいられなかったように思います。

文章を担当された東野ひろあきさんも、イラスト担当の川﨑あっこさんも、関西にゆかりのある方々です。この絵本も、そんな強い衝動によって、たった数ヶ月の間に集中して製作されることになったのかもしれません(余談ですが、一般的に絵本は企画から出版されるまでに時間をかけることが多いそうで、ときに10年以上の年月を費やすこともあるそうです)。

泣きむしだったはずのハナは、今自分が生きていること、それだけを思い、めいっぱい息を吸い込んで、かけまわって、明日のことを考えました。

いつしか新しい友ができ、おひさまのぬくもりや風の心地よさにふれるうち、ハナは時間をかけて少しずつ、穏やかな心の状態を取り戻してゆきます。

命ある限り、まっすぐに生きていこう。

猫としてまっすぐに生きるハナの姿は、創作であるにもかかわらず、まるで本当にあったことのように、静かな共感を私たちに与えてくれます。

これは、ハナがどの場面においても、いかにも猫らしい、リアルな仕草を見せる写実的な絵で描かれていることとの相乗効果もあるように思います。

たとえ大地震でなくても、突然、思いもよらない辛い出来事に直面することは、誰しもありえます。この作品はそんな時、優しく寄り添ってくれると思います。

辛い経験をなかったことにはできないけれど、まっすぐに生きようとする日々をまた積み重ねていれば、時間はかかったとしても、きっと穏やかな心を取り戻すことができるからね、と。

たまたま今回の記事の公開日は、この絵本が出版されたのと同じ7月7日。七夕ですね。皆さんは、どんな願いを短冊に込めるのでしょうか。

今生きているという幸せ。

しっかり心に留めておきたいなと思います。
泣きむしハナ 泣かなかった
東野ひろあき(文) 川﨑あっこ(絵)
ビーナイス
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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