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人形の家にすんでいたネズミ一家のおはなし(マイケル・ボンド)

緻密な表現力に、憧れや向上心をかき立てられる絵本

人形の家にすんでいたネズミ一家のおはなし
マイケル・ボンド(文)エミリー・サットン(絵)
今の住まいに暮らすようになって、3年半くらいになります。最近暖かくなってきたこともあって、落ち着いたら部屋の模様替えができたらいいな、なんて思った時に目についたのが、今回ご紹介する作品です。

文章はマイケル・ボンド。「くまのパディントン」でおなじみの作家です。

とあるお屋敷が所有する立派なドールハウスに住みついた、ネズミの一家。彼らの暮らしも非常に豊かなものでしたが、お屋敷の改修工事が始まった際、ネズミの子供たちのとった行動が、一家の危機を招きます。

テーマは「災い転じて福となる」といったところでしょうか。ちゃんとハッピーエンドが待っている、素敵なお話です。

このマイケル・ボンドの文章に、豊かな想像力と色彩感覚に優れた緻密な表現力で応えたのが、エミリー・サットンです。

まずは、そのドールハウスが、いかに立派で素晴らしいかを描いた見開きが目を引きます。

沢山ある部屋の一つ一つには、小さな家具や装飾品がそれぞれ端正に配置され、クロスや床のデザインも実に様々です。

ここでは、まさに細部まで時間をかけて丁寧に作り込まれたドールハウスを鑑賞しているような気分が味わえます。

その後つづく、物置の中の場面も素敵。雑然と置かれた植木鉢やガーデニング用品の間をぬって、ネズミの一家がおのおの遊んだり、寛いだりしています。

見開きの随所に彼らが描かれることで、今度はまるで、ネズミたちが演じる小さな劇をみている気分。生き生きとした仕草に、思わず頬が緩みます。

ラストに描かれているパーティーの見開きは、ハッピーエンドに相応しい華やかさを湛え、幸せな満足感を与えてくれます。

描き手の緻密な想像力と表現力は、読み手の憧れや向上心をかき立てます。エミリー・サットンが描くイラストは、そうありながらも親しみを滲ませて、読み手の心に寄り添ってくれます。

おかげで読み終わってみれば、部屋の模様替えだけでなく、美術館や劇場にも足を運びたくなってしまいました。

ここで書かせて頂くのは今回で丸3年、来月から4年目に入ります。これからもどうぞ皆さま、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
人形の家にすんでいたネズミ一家のおはなし
マイケル・ボンド(文)エミリー・サットン(絵)
徳間書店
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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