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赤ずきん (バーナディット・ワッツ)

赤ずきん
(岩波の子どもの本)

グリム (著)
バーナディット・ワッツ (イラスト)
ゴールデンウィークもほぼ終わり、 新緑が美しい季節となりましたね!

今月は岩波書店から発行されている、 ワッツの「赤ずきん」をご紹介します。

バーナディッド・ワッツは、 同様にいくつか古典的な童話の絵本を手掛けていますが、 「赤ずきん」は、他の作品と絵の趣きがちょっと違います。

私は、この「赤ずきん」の雰囲気が大好きで、 表紙にも使われているお花畑のシーンと、 その次の見開きのお花畑のシーンもお気に入りです。

ざっくりとラフなタッチで描かれた無数の花々。

寄り道せずにいられるわけないよと 思わず赤ずきんに肩入れしたくなっちゃいます。

赤ずきんがこちらに背を向けて座り込んで、 花を摘むことに夢中になっている様子も愛らしいです。

この絵本は「岩波の子どもの本」として 普及版というか、気軽に買える安価で小型のものと、 絵の魅力がより楽しめる大型のもの、2種類発行されています。

普通に考えると、絵本のサイズを小さくすると、 絵とともに文字も縮小されると考えるのが当然ですが、 「岩波の子どもの本」では絵だけを縮小して、 文字サイズはほぼ同じまま。

文章が収まりきらない場合はレイアウトの矛盾を解消すべく、 なんと次のページに見開きが追加されたのです。

それでいてちゃんと、 追加したページが文字だけになってしまわないように、 どこかの場面から使えそうな素材を持ってきて 反転するなど変化をつけて挿絵にするという対策が。

翻訳にも気を使ったそうで、 原文に忠実にと心がけられているんだそうです。 40年も前から今もそのまま版を重ねています。

すっかり大人になってしまった今の私は、 (海外作品を国内普及させる立場としての) 本の作り手の苦労が垣間見える、 「岩波の子どもの本」版が、実はお気に入りです。

ご存じかと思いますが、最後に赤ずきんは、 言いつけをやぶるようなことは二度としないと誓います。

…本当に?

オオカミに全く気づけないおばあちゃん、 幼い娘に頼んで済ませちゃう楽天的なお母さん、 無邪気であぶなっかしい赤ずきん…。 今思うとこの3世代、全員あんまり懲りてなさそう(笑)

子どもの頃、何らかの形で親しんでいるはずのこの童話。

赤ずきんの最後の誓いに誰しも納得するはずなのに、 「懲りずにまたやらかしてしまう経験」が 少なからずあるのは、一体どういうわけなんでしょう?

けれどそんな経験こそ、愛おしく感じられもして。

赤ずきんの普遍的なこの魅力。 勝るものなしといったところでしょうか。
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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