HOME  Book一覧 前のページへ戻る

マイクロソフトでは出会えなかった天職byジョン・ウッド

マイクロソフトでは出会えなかった天職
僕はこうして社会起業家になった
ジョン・ウッド (著), 矢羽野 薫 (翻訳)
出版社:ダイヤモンド社 (2013【内容情報】(「BOOK」データベースより)人生で満足させなければならない相手は自分自身だけ。自分が正しいと思うことをして、その気持ちに正直になればいい―。もっと大きく考えろ―世界を変えたいと思うなら。(出典:amazon
著者ジョン・ウッドはマイクロソフトで国際市場の開拓を担当していたエリートでした。1998年、多忙な業務をやりくりして休暇を取った彼は、ネパールの山奥の学校を訪問する機会を得ます。そこで見たのは、子どもでぎゅうぎゅうの教室と空っぽの図書館でした。

衝撃を受けたウッドは家族や友人知人に協力を仰ぎ、大量の本を集めます。そして翌年、父とともに8頭のヤクの背に本を積んで現地に届けました。 

1999年末、ウッドはマイクロソフト社を退職し、NGO「ルーム・トゥ・リード」を設立、学校や図書館の建設、女子の就学支援事業に乗り出しました。マイクロソフト時代に培った広い人脈を活用し、彼は並外れた熱意と行動力で活動を拡大します。本人は無報酬、貯金を切り崩す日々を続けながらです。

その熱意を支えたのは子どもの頃の幸せな思い出でした。彼は幼いころ母に読み聞かせをしてもらい、大の本好きになりました。10歳のクリスマスには両親から自転車をプレゼントされ、図書館に足しげく通ったといいます。幼いころに味わった、こうした本との幸せな出会いを、貧しい国に生まれたからといってあきらめなければならない子どもがいてはいけない、その信念が彼の活動の原動力になっているのです。

ウッドが始めたルーム・トゥ・リードは、2015年7月までにアジア・アフリカに1,930校の学校を建設し、17,534室の図書館・図書室を設立しました。2015年までに1000万人の子どもに教育の機会を提供するという目標もみごと達成しました。

ところで、本書を読み進めていくと一つの疑問が生じます。彼らの活動を支える資源はどこから調達しているのでしょう。ウッドは2冊目の著書『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』(ダイヤモンド社、2013年刊)で、事業拡大に伴う資金繰りの難しさを赤裸々に綴っています。

活動を支えているのは大富豪や企業からの大口の寄付です。その額は個人が出せる額とは桁違いです。彼らの社会的使命感や貢献によって得られる成果はもちろん尊いものです。しかし、学校や図書館すら持てない国や地域がある一方で、個人資産や社会貢献という名の経費でそれらを賄えてしまうほど富を蓄えている層が存在するという事実には大きな矛盾を感じざるを得ません。

国際連合は2000年、「ミレニアム開発目標」で、2015年までに世界中の子どもが初等教育の全課程を修了できるようにすると目標を定めました。その取り組みは一定の成果を上げ、初等教育を受けられない世界の児童数は、2000年の1億人から2012年には5800万人へと約半減しました。開発途上地域全体を見ると、初等教育の就学率は2000年の79.8% から2012年の90.5%へと改善しています。

しかし、これは全体としての数字で、地域によってはまだ就学率が80%に届かないところもあります。また就学した児童の25%以上は卒業できていませんし、紛争の影響で通学できない児童も多数存在します。障がい児への配慮不足といった課題も残っています。

ルーム・トゥ・リードは設立当初の目標を達成しましたが、世界にはまだまだ教育の機会を得られていない子どもたちがたくさんいます。彼らの次の目標は2020年までに1500万人に教育を届けることです。

「すべての子どもは限りない可能性を持っていて、実現のための機会を得るにふさわしい存在である」という彼らの活動の信念に賛同し、さらなる活動の展開に注目しつつ、同時に富の偏在やそれを生み出す構造にも目を向けていきたいと思います。

橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授
同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

OtherBook

信子先生のおすすめの一冊

あの名曲が生まれた物語を描く楽しい絵…

音楽名曲絵画館(青島広志)

信子先生のおすすめの一冊

偶然の出会いで世界が広がる

ぐるぐる博物館(三浦しをん)

信子先生のおすすめの一冊

読み終えるのが惜しく感じる珠玉の一冊

文盲(アゴタ・クリストフ)




@kansaiwoman

参加者募集中
イベント&セミナー一覧
関西ウーマンたちの
コラム一覧
BookReview
千波留の本棚
チェリスト植木美帆の
「心に響く本」
橋本信子先生の
「おすすめの一冊」
大人も楽しめる
英語の絵本&児童書
小さな絵本屋さんRiRE
女性におすすめの絵本
手紙を書こう!
『おてがみぃと』
本好きトークの会
『ブックカフェ』
絵本好きトークの会
『絵本カフェ』
手紙の小箱
海外暮らしの関西ウーマン(メキシコ)
海外暮らしの関西ウーマン(イタリア)
関西の企業で働く
「キャリア女性インタビュー」
関西ウーマンインタビュー
(社会事業家編)
関西ウーマンインタビュー
(ドクター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性経営者編)
関西ウーマンインタビュー
(アカデミック編)
関西ウーマンインタビュー
(女性士業編)
関西ウーマンインタビュー
(アーティスト編)
関西ウーマンインタビュー
(美術・芸術編)
関西ウーマンインタビュー
(ものづくり職人編)
関西ウーマンインタビュー
(クリエイター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性起業家編)
関西ウーマンインタビュー
(作家編)
関西ウーマンインタビュー
(リトルプレス発行人編)
関西ウーマンインタビュー
(寺社仏閣編)
関西ウーマンインタビュー
(スポーツ編)
関西ウーマンインタビュー
(学芸員編)
先輩ウーマンインタビュー
お教室&レッスン
先生インタビュー
「私のサロン」
オーナーインタビュー
「私のお店」
オーナーインタビュー
なかむらのり子の
関西の舞台芸術を彩る女性たち
なかむらのり子の
関西マスコミ・広報女史インタビュー
中村純の出会った
関西出版界に生きる女性たち
中島未月の
関西・祈りをめぐる物語
まえだ真悠子の
関西のウェディング業界で輝く女性たち
シネマカフェ
知りたかった健康のお話
『こころカラダ茶論』
取材&執筆にチャレンジ
「わたし企画」募集
関西女性のブログ
最新記事一覧
instagram
facebook
関西ウーマン
PRO検索

■ご利用ガイド




HOME