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A Child of Books by Oliver Jeffers and Sam Winston

Child of booksが案内する物語の世界

A Child of Books
by Oliver Jeffers and Sam Winston
子どものころ、本をたくさん読みましたか? 今も物語を読んでいますか?

この絵本では、表紙のイラストのちょっと透きとおって妖精みたいな Child of books が、物語の世界を案内してくれます。皆が知っている本の文章が、コラージュでイラストに使われています。

いかだに乗った Child of books は、『ドリトル先生航海記』『モンテ・クリスト伯』『海底二万里』などの物語の活字でできた波にのって、男の子の家にやってきます。なんだか元気のない男の子です。

Child of books は、男の子を冒険の旅に連れ出します。物語でできた山を越え、洞窟をぬけ、お城で怪物にでくわし、歌でできた雲の上で眠り、宇宙で思いきり叫びます。男の子はだんだん笑顔になっていきます。始めはほとんど色がなかったページに、色鮮やかな物語の世界が広がっていきます。

人気絵本作家の Oliver Jeffers と活字を使ったアート作品を手がける Sam Winston の共作で、イラストは活字、写真、手書きのイラストなどを組み合わせた独特なコラージュです。Oliver Jeffers の手書きの文字が素敵なので、ぜひ原書で読んでみてください。

男の子のお父さんが、難しい顔をして、”Important Things” とか “Serious Stuff” と書かれた新聞を読んでいるシーンがあります。わたしも、仕事に関係のない本を読むのに、なんだか罪悪感を感じてしまって、小説を控えた時期がありました。一生で読める本の数は限られているのに、つまらない考えで時間を無駄にしてしまったと後悔しています!

絵本は、アメリカの詩人 Muriel Rukeyser の言葉 “The universe is made of stories, not of atoms.”「世界は原子ではなく、物語で出来ている。」の引用で始まり、”For Imagination is Free”というメッセージで終わります。素敵ですね。

表紙には、鍵穴のある本、裏表紙には鍵のイラストが。カバーを取ると、美しい赤い布の装丁になっているのも、テンションがあがります。

絵本には40を超える有名な児童文学のタイトルが登場しますが、知っていても読んでいなかったり、子ども向けの抄訳で読んだりしたものもあるのではないでしょうか。

以前レビューを書いた “The Wanderer”『旅する小舟』の作者が『海底二万里』の挿絵にインスパイアされたという記事を読んで、『海底二万里』を読んでいないことに気づきました。ネモ船長とノーチラス号は聞いたことがあるのに、話を知らない!

慌てて読みましたが、『海底二万里』は、その後に読んだ “All the Light We Cannot See” 『すべての見えない光』という感動的な小説にも登場して、より臨場感を感じることができました。読んで良かったです。

絵本の見返しには、児童文学のタイトルがびっしり並んでいます。他にも読んでいない本、読み返したい本がたくさんつまっていて、眺めているだけでも楽しくなります。本好きの方、子どもたちにも、手にとってもらいたい絵本です。
A Child of Books
by Oliver Jeffers and Sam Winston
Publisher: Walker Books
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
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