A rose, a bridge, and a wild black horse by Charrotte Zolotow
![]() |
|
![]() 母娘の愛情が伝わる美しい絵本 A rose, a bridge, and a wild black horse
by Charrotte Zolotow シャーロット・ゾロトウは、児童書の著名な編集者でもありました。50年以上のキャリアを持ち、数々の有名な作品を生み出しました。
著者としては、マーガレット・ワイズ・ブラウンと並んで評される存在で、イラストレーターと組んで絵本の文章を書きました。A rose, a bridge, and a wild black horse は、1964年にユリ・シュルヴィッツのイラストで出版されたのち、ロビン・スボワート、レスリー・マクガイアのイラストでも出版された、長く愛され続けている作品です。 オリジナルは、お兄さんと妹のお話でしたが、去年出版された、ジュリー・モースタッドのイラストの絵本では、母と娘に変わっています。編集者の発案によるもので、シャーロット・ゾロトウの娘でライターのクレセント・ドラゴンワゴンの書いたあとがきに、解説もあります。 日本語版は、『おかあさん、いいことおしえてあげる』です。翻訳者の福本友美子さんの刊行記念トーク・イベントに、オンラインで参加することができ、とても興味深く拝聴しました。 物語は、小さな女の子がお母さんに話しかけるところから始まります。 Guess what I’ll do, said the girl to her mother.
女の子は、大きくなったら、お母さんのために、どんなことをするか、とっぴな内容を次々に語ります。素手で岩をまっぷたつに割ってあげるとか、野生の黒い馬をつかまえて、飼い慣らして、プレゼントするとか、世界でいちばん大きな橋をかけてあげるとか…
大人の姿になった女の子も、お母さんも、表情は淡々としています。橋をかけてあげるページでは、あまりに感動のない母親に、女の子がむっとしているように見えておかしい。二人の間の愛情は、しっかり伝わってきます。 イラストは、美しい色調の夕焼けのようなオレンジ色、淡いピンク、パープルがベースになっていて、水彩、グラファイト、パステル、鉛筆、クレヨン、デジタルを組み合わせて描かれています。写真を組み合わせたコラージュも。色の組み合わせがスタイリッシュですが、手書きの質感が残っていて、温かみがあります。 海外の絵本では珍しく、カバーがあって、外すと、薄いピンクをベースにして、表紙には黒い馬、裏表紙には、美しいバラが描かれています。見開きページも、表はパープル、裏は落ち着いたオレンジ。タイトルページの文字も色分けされていて、凝った装丁です。プレゼントに良さそうですね。 ![]() 最後に、女の子は、お母さんに友達を残して、旅立つことを宣言します。
Then I’ll leave you a friend to keep you company, while I explore the world.
兄と妹から、母と娘に設定を変えると、全体の印象もまったく変わってしまいますが、また違った形で完結しているのは、作品の持つ力なのでしょうか。
クレセント・ドラゴンワゴンは、母と娘の設定の方が、お話により真実味が感じられると書いています。福本友美子さんのトーク・イベントでもありましたが、絵本は、編集者のサポートもあって作られているのですね。時代によって変わっていくのも、面白い試みだと思いました。 A rose, a bridge, and a wild black horse
by Charlotte Zolotow, Pictures by Julie Morstad Publisher: Cameron Kids, an Imprint of ABRAMS ![]() 谷津 いくこ
絵本専門士 絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。 StoryPlace HP:http://www.storyplace.jp Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/ |