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Again by Emily Gravett

イラストも製本技術もすごい

Again!
by Emily Gravett
Cedric は、ドラゴンが主人公の絵本が大好き。名前が自分と一緒なのも気に入っています。今日も、おやすみ前にお母さんに読んでとお願いします。

絵本のセドリックは、真っ赤な恐ろしいドラゴン。今まで一度も眠ったことがありません。夜になると、大きな音たてて塔によじ登り、おとなしいトロールたちをいじめ、お腹がすくと、お姫さまたちを捕まえて、パイにしてむしゃむしゃ食べてしまいます…

お母さんがセドリックに読んであげている絵本が、二人の背後に大きく見開きで描かれていますが、古びて日焼けし、シミがあるところまでリアルに表現されています。怖いお話だけど、イラストはユーモラス。

お母さんが読み終わると、セドリックは、Again? とねだります。

眠いお母さんが読む絵本は、セドリックに早く眠って欲しい気持ちから、だんだんお話が変わってきます。夜になったらセドリックは寝なければいけないとか、トロールたちにパイを取り出して分けてあげましたとか…

それでも、もう一度読んでとねだるセドリックに、半分眠っているお母さんは、お話をつくって読み聞かせます。絵本の中のセドリックは、だんだん緑色になってきて、お姫さまとも仲直り、トロールたちは幸せそうです。

お母さんが開いている絵本は、元のお話のイラストで、読み聞かせているお話のイラストでは、ドラゴンとお姫さまがキスをしています。さすがにセドリックもなんだかオカシイのが分かってきた様子。

ついに絵本の登場人物も、お母さんもぐーぐー寝てしまい、真っ赤になって怒ったセドリックは絵本を振り回し、Again! Again! とかんしゃくを起こして…

振り回された絵本の中のドラゴン、お姫さま、トロールたちがひっくりかえり、お姫さまはドレスもまくれあがってしまっているのがおかしい。

セドリックが吐いた炎で、絵本の裏表紙には、本当に穴が空いていますが、焦げがリアルに描かれていて、見入ってしまいます。イラストも製本技術もすごいなあ。カバーを外すと、表紙でセドリックが持っているのと同じ赤い絵本になっているのも素敵です。

カーネギー画家賞(旧ケイト・グリーナウェイ賞。イギリスで、毎年最も優れた絵本の画家に贈られる賞。)を、二度も受賞している Emily Gravett のイラストは、とても素晴らしく、セドリックも眠い眠いお母さんも表情がとても豊かです。お母さんの目が、どんどんしょぼしょぼしてくるのが、笑ってしまいます。

イラストは、インクと水彩で描いたものが、デジタル加工されていて、絵本の中の絵本と、お母さんとセドリックが立体的に分かれて見えます。

イラストに色々仕掛けもあり、本当に何度も読み返したくなる絵本です。
Again
by Emily Gravett
Publisher: Two Hoots
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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