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The Carrot Seed by Ruth Krauss

自分を信じるのはとても大変

The Carrot Seed
by Ruth Krauss
The Carrot Seed(『にんじんのたね』)は、1945年のRuth Krauss(著)、Crockett Johnson (イラスト)夫妻の作品です。

以前に読んだ時は、心に残らなかったのですが、絵本作家のレイチェル・ブライトさんが、講演会で、大好きな絵本として読み聞かせるのを聞き、じんわりと感動しました。

とてもシンプルな絵本で、言葉も少なく、100語ほど。でも、子どもにも大人にも響く内容です。

小さな男の子がにんじんの種を蒔きます。お母さんも、お父さんも、お兄さんも、芽が出ないと言いますが、男の子は、毎日水をやり、雑草を抜いて世話をします。

皆は、芽が出ないと言い続けますが、男の子は黙って世話を続けます。そして、ある日、にんじんは、突然芽を出します。
And then, one day, a carrot came up
just as the little boy had known it would.
男の子は知っていたんですね。

地表には何の変化も見えませんでしたが、土の中では、にんじんは、とても大きく育っていました。

家族や身近な人たちに出来ないと言われ続けて、自分を信じるのはとても大変。それでも、忍耐強く、淡々と続けていくことは大切なのだと勇気づけられます。

原書が絶版になっていて、日本語版が残っている絵本は多いですが、これは日本語版が絶版で、原書はまだ出版を重ねています。

いろいろ検索していたら、モーリス・センダックの書評が出てきました。

センダックは、この本が出版された当時17才でした。終戦直後に出版されたこの絵本を、見かけは無害そうで、中身は革新的と書いています。

その出版から5年後に、自分が、ウルスラ・ノードストロームとルース・クラウス、クロケット・ジョンソン夫妻の指導を受けて、創作活動を始めるとは考えていませんでした。

センダックは、自分をにんじんのたねに例えています。彼ら3人だけが自分を信じて愛情深く育ててくれたと。

そんなお話を知ると、ますますこの絵本が魅力的に感じられますね。

信じてもらえないことは、次から次へエンドレスに発生します。また、努力を重ねても、何の変化も見られないことも。

素敵な絵本に気づかせてくれた、レイチェル・ブライトさんに感謝したいです。
The Carrot Seed
by Ruth Krauss, Illustrated by Crockett Johnson
Publisher: HarperCollins
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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