ちょうちょのためにドアをあけよう(ルース・クラウス)
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![]() 幼年時代に置いてきたまっすぐさがここにある ちょうちょのためにドアをあけよう
ルース・クラウス(文)/モーリス・センダック(絵) 木坂 涼(訳) 先日、初めて歌舞伎を観るために東京へ行きました(わざわざ東京で観ることになったのは、相応のなりゆきがありまして)。鑑賞後、帰りの飛行機まで少し時間があったので、気になっていた書店に立ち寄りました。
「SOZO BOX」というお店。誰かに本を贈るための本屋さんということで、店内にラッピングコーナーと、ポストがあるんです。来店者が選びやすいよう厳選しているのか、並ぶ本の数は少なく、100冊くらいでしょうか。 様子見のつもりで何もせず帰ろうかなと思っていたところ…あ!これ私の好きな絵本!目にとまったのが、今回ご紹介する作品です。 この作品は、随分前にご紹介しました「ぼくはきみで きみはぼく」と同じコンビによるものです。本のサイズが小さくテーマも違っていますが、構成は似ています。 物語ではなく、子供たちの短い言葉がいくつも並んだ作品。例えるなら、道ばたで見つけたかわいいお花や、不思議な形に虫が喰った落ち葉など、拾い集めたものをお気に入りとしてとっておく、スクラップブックみたいな作品? 収集した色々な言葉にキュートな絵を添えて、こんな風に作品として昇華させられるなんて!素敵過ぎて、憧れずにはいられません。 言葉を収集したと考えるのには理由があります。というのも、そのあり方には一貫性が伴いつつも、一つ一つの言葉には、いくつかの違う価値観・人格が存在しているように感じられるからです。 最近は推し活を狙ってか、キャラクターが乱立する作品がよくありますが、そういう人工的な仕掛けとは別次元の、人が持って生まれたままのむき出しの個性というか、厳然たる違いが滲んでいるとしか思えないのです。 作者はどうしてこれらを、愛おしい言葉の標本であるかのように丁寧にすくい上げ、作品として認めたのでしょうか。実際のところ、中にはギョッとするようなものが含まれていたりもします。 幼い頃は誰しも、理解に関係なく、全てをまっすぐに受け止めて心に映し出していたはず。一方で、誰もが大人になろうと成長する中では、理解しようと考えるほど視界が曇り、心に映る像が歪んでしまうことがしょっちゅうあります。 そして大人になったとて、現在進行形で、心の曇りを招いてしまうケースが様々にあるってこと。経験上、誰もが心得ていますよね。ここにある言葉と絵は、幼年時代に置いてきたまっすぐさが、自分にも確かにあったことを思い出させてくれますよ。 というわけで、この先、様々な成長の機会が押し寄せるであろう小3の姪っ子に、これを贈ったんです。唐突に届いて「東京から?なんで?」と、今頃首をかしげてるかも(苦笑)今度会うし、まあいっか。 ルース・クラウス(文)/モーリス・センダック(絵)
木坂 涼(訳) 岩波書店 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |