ぼくらのオペラ(寺門孝之)
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![]() この素敵な演出をじっくり味わってみて! ぼくらのオペラ
寺門孝之(作) 今月は「巨大地震に備えましょう」の話題がたくさん見受けられました。
今回ご紹介する作品は、添えられた説明によりますと、著者が阪神淡路大震災の経験以降あたためていたイメージをもとに書き下ろした作品とのことです。出版時期は2009年です。 「オペラ」とあるとおり、最後まで「見開き=舞台」の構成です。読む人は客席にいる状態。 本の見返しでは、まだ幕が下りています。合図のベルの音、客席のざわめき、場内アナウンスが所々にテキストで書かれています。 見返しをめくると、本のトビラが現れるのかとおもいきや、幕が下りたままの見開きが続きます。テキストは、控えめな位置に「しーん」と一言だけ。 もう始まる!ってワクワクしながら、それでいて、喋れなくて気まずいような、この感じ。舞台をよくご覧になる方なら馴染みのある場面ですよね。開演直前特有の「間」が、絵本の中にうまく再現されています。 次の見開きで幕が上がりました。まだ暗い舞台の中央には、うっすら光る天の川が静かに浮かび、舞台上では流れ星のようなドレスをまとった星たちが並んで歌っています。星のオペラです。その次は、もう少し舞台が明るくなりました。月のオペラです。 そして、ようやく次の見開きで、この本のトビラが現れます。 スポットライトを浴びた男の子が大きな口を開けて歌っています。その頭上に本のタイトル。 舞台の雰囲気を絵本に落とし込んだ、ユニークな演出。私の拙い文章でその魅力が伝えられているのか??…不安しかありません(汗) 実際にご自身の手でページをめくって、この素敵な演出をじっくり味わってみて!って言いたくなっちゃう、興味深い手法だなって思います。 さて、すっかり冒頭の説明が置き去りになっていますが「大震災の経験以降」のイメージとは?今度は、トビラをめくるとわかります。 地震、雷、火事、親父。恐ろしいもののオペラがしばらく続いて、折り返しは、おっかさんのオペラ。舞台全体を暖かく照らす大きな太陽とともに、幼い子供を抱いた女性が何人も、舞台上で精一杯に歌います。 オペラをきちんと鑑賞したことはないのだけれど、人生を謳歌する、生きる喜びが反映された舞台芸術というイメージを持っています。この絵本は、そのイメージにぴったりとフィットしながらも、人だけでなく、生きるものすべてにその眼差しが向けられています。 あ、神様も登場するから、よりよく生きようとする人々の想像力によって生まれた存在についても、ということになるのかな? 明日何が起こるかなんて誰にもわからない世界を、みんなで懸命に生きている。 そうした感覚を思い出させてくれる、おおらかな作品です。 ぼくらのオペラ
寺門孝之(作) イースト・プレス ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |