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The Midnight Fair by Gideon Sterer

夜に浮かぶ照明が幻想的

The Midnight Fair
by Gideon Sterer, Illustrated by Mariachiara Di Giorgio
“The Midnight Fair” は表紙が印象的な絵本です。メリーゴーランドの明かりが夜に浮かび上がって、とてもきれいですが、目をこらすと、なんだか変。クマ、オオカミ、キツネ、シカまで馬にまたがっていて、周囲で見物しているのも動物たちです。

動物たちは、森にやってきた移動遊園地から人間がいなくなるのをじっと待っていました。最後のお客さんが帰って、真っ暗になると、柵の隙間から入り込みます。

アライグマがブレーカーを上げると、一挙に華やかな明かりがともり、動物たちは駆け出します。どうも、これが初めてではないみたい。スタッフ役の動物もいて、チケットを売ったり、アイスクリームやホットドックを売ったりしています。代金は、木の実、きのこ、果物などで支払われます。

文字のない絵本ですが、マンガのようにコマ送りになったり、1ページや見開きいっぱいのイラストがあったりして、すんなりお話に入っていけます。

イラストレーターの Mariachiara Di Giorgio は、映画や広告の絵コンテ・コンセプトデザイナーとして働いていた経験があり、映画のシーンのように、いろんなアングルで表現されたイラストが素敵です。コーヒーカップは真上から、空中ブランコはななめ下から描かれていて、スピード感も伝わってきます。

動物たちの表情は、とてもコミカルで可愛らしいですが、背景は、水彩で柔らかく、夜に浮かぶ照明が幻想的です。

お菓子や、景品のぬいぐるみを抱えて、乗り物に乗る動物たちは、とっても楽しそう…人間と同じで、怖がって固まっているものもいますが。

見張り役のフクロウが、警備員が起き出したことを告げると、みんな大急ぎで後片付けを始めます。掃除をして、ゴミを捨てる律儀な動物たち。

この絵本は、ケイト・グリーナウェイ・シャドワーズ・チョイス・アワード2022を受賞しました。子どもたちの投票で選ばれる賞です。夜の遊園地、お菓子、動物たち。子どもが好きなものがいっぱいで、とてもワクワクするお話だろうなあ。

繰り返し登場する動物のサイドストーリーもあって、それを見つけるのも楽しめます。輪投げで景品の金魚を受け取るオオカミの子どもは、ちょっと皆と違う雰囲気であったりもします。

作者の Gideon Sterer は、ニューヨーク州北部の自然の中で育ち、両親はそこで小さな動物園を持っていました。そんな環境から動物に親しんでいたのでしょうか。

ペーパーバック版には、遊園地のチケットが付いているそうです。チケット、欲しかったな。
The Midnight Fair
by Gideon Sterer, Illustrated by Mariachiara Di Giorgio
Publisher: Candlewick Press
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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