しろいうさぎとくろいうさぎ(ガース・ウイリアムズ)
やっぱり絵本はこうでなくっちゃ しろいうさぎとくろいうさぎ
ガース・ウイリアムズ(作) まつおかきょうこ(訳) 昨秋から、記事の公開予定日を第4土曜日に変えて頂いたので、今回は年始とはいえ、もうすぐバレンタインデーがやってくる頃の公開です。
というわけで、今年このタイミングにぴったりな作品といえば…この作品ではないでしょうか。きっと、頷いて下さる方も多いはず。 絵は一見して、地味にも思えますが、黄色の使い方が特徴的です。表紙ではタンポポ。作中ではキンポウゲやヒナギクなども、同様の手法で描かれています。 この黄色が画面の中でよく映えるせいでしょうか、二匹が暮らす森全体が、春の心地よい暖かさに包まれていて、駆け出したくなるような様子なんだというのを感じることができます。 仲良しで、いつも一緒に遊んでいる、しろいうさぎとくろいうさぎ。 こんなにも穏やかで開放的な春の森で、毎日気ままに遊んでいるにもかかわらず、くろいうさぎの様子が、ちょっと変です。少し遊んでは座り込んで、何だか悲しそうな顔をしています。 その度に、しろいうさぎが「どうしたの?」と聞いても「うん、ぼく、ちょっと かんがえてたんだ」と答えるばかり。 子供の頃なら「くろいうさぎは、一体どうしてしまったんだろう?」と、相当心配になったはずなんですが。大人が読めばおそらく、誰の目から見ても明らかなのです。 くろいうさぎは、しろいうさぎに恋をしているって。 てか、物語が始まる前(本のトビラ)からもう、くろいうさぎは、とにかくしろいうさぎをじっと見てるんです。その後も、ほぼずっと、しろいうさぎのことしか見ていません。 こうなると、です。しろいうさぎは、内心では察しがついているものの、知らぬふりで「どうしたの?」と何度も問いかけているのか…?(笑) というのも、この後、非常にほほえましい展開が待っておりまして、くろいうさぎのぼんやりとした答えに対する、しろいうさぎの台詞がたまらんのです。このやりとりを交わす時の、二匹の表情もたまらないですし、見開きの使い方など絵本的演出もたまらん…! やっぱり絵本はこうでなくっちゃ!と言わしめるハッピーエンドに、納得の読後感を味わえます。 実は、この原稿のために改めて読んだ日は、それこそ「一体どうしたの?!」というくらい春の陽気でしたので(関西は4月中旬並みの気候でした)、思いがけず、一層の満足感を得たのかもしれません。 まだまだこれからが冬本番というのに、何だかすっかり春が恋しくなってしまったなあ…。 とはいえ個人的には、春からの準備がまだいくつも残っているので、もう少し頑張ってからでないと、春を迎えるわけにはいかなくて。 うさぎ年にあやかって、今年は誰にとっても、それぞれに飛躍の一年となりますように。 本年もどうぞよろしくお願いいたします! しろいうさぎとくろいうさぎ
ガース・ウイリアムズ(作) まつおかきょうこ(訳) 福音館書店 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |