How War Changed Rondo by Romana Romanyshyn and Andriy Lesiv
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![]() 新しいタイプの、戦争をテーマにした絵本 How War Changed Rondo
by Romana Romanyshyn and Andriy Lesiv ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから3カ月近くがたちました。大阪でも、ウクライナからの避難民受け入れが連日報道され、戦争が今までになく身近に感じられます。
“How War Changed Rondo” は、2014年からのロシアのクリミア侵攻の実体験をもとに描かれた絵本で、ウクライナの絵本ユニット、ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ夫妻の作品です。 ブラティスラヴァ世界絵本原画展とボローニャ・ラガッツィ賞のダブル受賞をした『うるさく、しずかに、ひそひそと』の著者として、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ページをめくると、かわいい3人の主役が登場して、戦争がテーマであることを忘れてしまいます。Rondoは、ユニークで、とても美しい町です。住民たちは、みんなこの町を愛していますが、Danko、Fabian、Zirkaの3人は、誰よりもRondoが大好きです。 Dankoは、半透明で電球のように輝く体をした男の子。Fabianは、バルーンアートの犬のようで、飛んでいかないように、いつも銀のメダルを身につけています。折り紙の鳥のようなZirkaは、旅が大好きな女の子。 Rondoで有名なのは、歌を歌う花たちです。温室では、よくコンサートが開催され、世界中から人が集まります。Fabianは、毎朝温室を訪れて花の世話をし、一緒に歌を歌います。そのあとFabianとカフェで会い、Zirkaの家に遊びに行くのが日課です。 いつもと変わらない平和な町に、突然戦争がやってきます。ページは一転して、色のない暗い世界に。恐ろしい戦車たちを引き連れた、得体のしれない黒い闇が町を襲います。 戦争に触れられたものは、みな無になって消えてしまいます。通った跡には、乾燥して尖った恐ろしい黒い花と雑草が生えてきます。3人は初めは戦争と話をしようとし、次に戦いますが、戦争は止められず、みな怪我をしてしまいます。町は破壊され、花々はしおれて歌うのをやめてしまいました。 Rondoの住民たちは、力を合わせ、最後には戦争に打ち勝つのですが、町もみなも、まったく元通りになることはありませんでした。黒い花の後には、赤いヒナゲシが咲きました。戦争の前は、ピンク、黄色、紫などの色とりどりのヒナゲシが咲いていたのに、今は赤しか咲きません。赤のヒナゲシは、戦場の跡地など、過酷な自然環境でも花を咲かせ、戦死者追悼の象徴となっています。 戦争は、終わった後も町や人の心に深く傷痕を残します。登場人物たちはキュートですが、戦争の現実が淡々と語られるストーリーが、心に響きます。 戦争がまったく人の話を聞かず、またハートも持っていないのが、恐ろしく感じられました。 イラストには、コラージュが用いられ、アーティスティックで美しいです。細かいところにまで、趣向が凝らされています。新しいタイプの、戦争をテーマにした絵本です。 How War Changed Rondo
by Romana Romanyshyn and Andriy Lesiv Translated by Oksana Lushchevska Publisher:Enchanted Lion Books ![]() 谷津 いくこ
絵本専門士 絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。 StoryPlace HP:http://www.storyplace.jp Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/ |