いばらひめ(ロール・ル・カイン)
とびきり素敵なときめきの洪水 いばらひめ(グリム童話より)
エロール・ル・カイン(絵) やがわすみこ(訳) つい先日、2度目のワクチン接種を受けました。終わってみると「(もう日々の感染症対策は習慣になっているのだし)できることは全部やった!」と。そして迎える大好きな秋!秋本番となる前に接種が完了したことに、まずは感謝です。
さて今回ご紹介するのは、久しぶりのグリム童話から。どちらかというと「眠れる森の美女」などのタイトルで親しまれているお話です。また、エロール・ル・カインは、さくらももこさんが影響を受けた絵本作家としても知られています。 私の手元にあるもの(写真)は旧版で、現在は新版として流通しています。 表紙には、本文から抜粋されたイラストが配置されています。お姫様誕生のお祝いの宴に招かれた仙女たちと、招かれなかった13番目の仙女。表紙を開くと、また一枚。これは、物語を知っているとハラハラせずにはいられない場面です。なんというチラ見せ!(笑) その後に現れる、本の扉。見た瞬間、「おとぎ話バンザイ!」と声に出して言いたくなるような、可愛すぎる装飾枠でデザインされています。個人的には、これが表紙でも素敵だろうなあって思うほど、ときめきます。 各ページ、テキスト周りに装飾枠があしらわれているのですが、どれも場面の雰囲気を盛り上げる、遊び心あふれたデザインで楽しい。 これらの装飾枠。抜群のクオリティなのですが、この遊び心を思えば、描いたご本人にとっては、比較的肩の力を抜いて取り組んだものだったのかな?と思ったり。 というのも、そう思わせるほど、配された全てのイラストが隅々まで美しすぎて。各場面の、あらゆる装飾物の描き込み具合に注目すると、もうとんでもない。 お城のレンガやタイル、屋根の瓦、柱の装飾、ステンドグラスとその美しい影、カーテンや壁紙、洋服の生地の模様や質感、茨が網の目のように生い茂った様子など。さながらモチーフと模様の洪水です。 これは、おとぎ話の世界にどっぷりと浸らせてくれる、とびきり素敵な洪水。一冊分も堪能すればもう、今度は叫びたいくらいの気持ちになります(私は)。 先を急ぐでもない王子がふらりとやってきて、目覚めない可憐なお姫様に興味を抱く世の中であるならば、きっと平穏な世の中であるに違いありません。 そして自分だけが時を超えるんじゃなくて、お城中の人々と一緒に100年の時を超えるのであれば…案外やぶさかでない経験?100年先の未来。身近な人たちと楽しく暮らせるなら、ちょっと見てみたいかも。 読み終わって物語の世界から目覚めてみれば、目の前には停滞した日常が。この日常もそろそろ、確実な目覚めへと向かってほしいところですね。 期待を込めつつ、新しい手帳に来年のプランをしたためようと思っているところです。 いばらひめ(グリム童話より)
エロール・ル・カイン(絵) やがわすみこ(訳) ほるぷ出版 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |