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へびのクリクター(トミー・ウンゲラー)

痛快で心地よくむしろ特別な味わい

へびのクリクター
トミー・ウンゲラー(作)中野完二(訳)
子供の頃ピーマンやナスが苦手だったのに、大人になったら好んで食べるようになる、というのはよくある話ですが、つい最近、この年になってなお、それと似たような経験をしました。これまでずっと、強面に感じられて敬遠していたパイソン柄が、なんだか素敵に見えるんです。

そのポシェットが小ぶりで、どこかクラシカルな雰囲気で、落ち着いた秋らしい色柄だったせい?この秋使ってみたくなっちゃって、散々悩んで結局買ってしまいました。自分でもよほど驚いてます。

似合うのか…?想像するのはやめてくださいね(笑)。もうね、開き直ってノリノリで使うつもりになっちゃってるんです。早く涼しくなってほしい!

そんなわけで、今回の絵本です。フランスの小さな町で、クリクターという大きなヘビが活躍するお話。

クリクターは、ブラジルからボド夫人の家にやってきました。爬虫類学者の息子が夫人の誕生日のギフト(!)にと、送ってきたからです。

こうした絵本にしては珍しく、品種が具体的に紹介されています。毒を持たない「ボアコンストリクター」というヘビだそうです。ネットで調べると、見た目はまさに大蛇のイメージそのもの、毒がないって言われても「いやいや、噓でしょ!」って言いたくなるほどの迫力です。「ハリーポッターと賢者の石」の映画の中で登場したのも、この品種だそうですよ。

息子が爬虫類学者というだけあって、ボド夫人も案外見込みというか、耐性があって。受け取った直後は怖がって悲鳴を上げた夫人でしたが、毒がないとわかると、たっぷり愛情を注いで大切に育てます。賢く穏やかな性格に育ったクリクターは、いつでも夫人と一緒です。そのうち夫人の職場である学校や(夫人は小学校の先生)、暮らす地域にもすっかり馴染んでしまいます。

さて。作者のトミー・ウンゲラーの作品では「すてきな三にんぐみ」をご存じの方が多いかなと思います。強盗だった彼らが、あることを機に「すてき」になるお話。生き物が登場する作品を挙げてみると、ヘビの他に、タコやハゲタカなど。

彼らはみな敬遠されがちな、数多の絵本作家があまり主人公に選ばないような者たちです。しかしながら、彼らに活躍の場を与えることで浮かび上がってくるテーマやエッセンスは、痛快で心地よく、むしろ特別な味わいとなって私たちの心に印象深く刻まれます。

誰でも本当のところは、無意識な思い込みなんていらないし、捨てれるものなら捨ててしまいたいと、心のどこかで願っているせいでしょうか。

そういえば、前回はカエルでしたね。こういう生き物が苦手な方、ごめんなさい。これを機に「ヤツら、もしかしたらちょっとかわいいかも?」なんて、苦手意識が和らいでくれたなら、嬉しい限りです。
へびのクリクター
トミー・ウンゲラー(作)
中野完二(訳)
文化出版局
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/





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