ねえさんといもうと(シャーロット・ゾロトウ)
理想的な「姉妹の素敵な関係」 ねえさんといもうと
シャーロット・ゾロトウ(作) 酒井駒子(絵・訳) 早速ですが、今回ご紹介する絵本は、姉妹の素敵な関係を描いた作品です。かつて福音館書店から発行されていたものがあって、こちらは酒井駒子さんの訳と絵によるリメイク版です。
絵の魅力については、もう語らずともでしょうか? ファンの方も多いのではと思います。 登場するのは、面倒見のよい、しっかり者のお姉ちゃんと、自分は家族中から守られるべき対象なんだと、本人さえも思っているような妹ちゃん。 でもそれは、お話の中程でおしまい。ある日の妹ちゃんは、いつもと違う行動に出ます。お姉ちゃんから離れて、一人になりたくなってしまったからです。 こっそり一人ででかけて、体がすっぽり隠れちゃうくらいの草むらに寝転がって、おやつのこと、姉が読んでくれると言ってた本のこと、いつもの姉のふるまいについて。今一人でいるがゆえの、懐かしさに似た愛おしさに浸りながら、一人の時間を過ごします。 その頃、お姉ちゃんは。妹が一人ぼっちで不安にしてるに違いないと思い込んでか、必死で走りまわって妹を探します。全然見つからなくて、くたびれて、心配のあまり怖くなって、うずくまって泣き出してしまいました。 ところで、私には年の近い妹と、年の離れた弟がいるのですが、私自身は、自分が「姉」として生きなくちゃいけなくなったことに、未だ違和感があります。 実際のところ、社会に出てからというもの、「こんなお姉ちゃん(お兄ちゃん)がいたらいいのに!」と思うような、年上の人との関わりが心地よくって。 そんなだから、ここからの展開には慄くばかり。やっぱり私は姉でしかないみたい。 というのも、この妹ちゃん。姉が自分を探していると理解した上で、そのために姉がくたくたになって、しくしく泣いているというのに、その傍らに隠れながら、しれっと姉の様子を観察してるんですよ…! それ、私には無理!(笑) 恐るべし、生まれながらの妹。ごく自然にこれをやってのけちゃう。 「(勝手に心配して、勝手に探し回って)そんなん知らんがな」って思ったからするんじゃなくて、そんな思いがよぎる前にそうできてしまう(ゆえに思う必要もない)。やっぱり末っ子は無敵だ。 ラストでは、実に理想的な「姉妹の素敵な関係」が描かれます。私と妹とでは、到底築けなかったもの。 けれど、いい大人になってからこうした理想形に触れたとき、未だ理想とは程遠い自分たちの関係が、あんまりにもぶきっちょ過ぎて、愛おしく感じられるのも確かで。 自分では選択することができない、兄弟、姉妹、あるいは家族との関係。そうした場合の理想って、目指したり叶えたりするためにあるんじゃないのかもしれないですね。 皆さんはいかがでしょうか? ねえさんといもうと
シャーロット・ゾロトウ(作) 酒井駒子(絵・訳) あすなろ書房 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |