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The Deep by Mayur & Tushar Vayeda

ガンジャドの川と粟島の海を繋ぐ深い青

The Deep
by Mayur & Tushar Vayeda
マユール 、トゥシャールのワイエダ兄弟は、インド西部のガンジャドで暮らす20代の若きアーティストです。

先住少数民族のワルリ族の家庭に生まれた兄弟は、家の土壁や床に描かれてきた伝統的なワルリ画を学び、新しい手法と融合させることで美しい作品を生み出しています。

彼らは、瀬戸内国際芸術祭に参加するために粟島に招かれ、6ヶ月あまり滞在しました。

そこでインスピレーションを得てつくられたのが、”The Deep” の絵本です。

ハンドメイドのシルクスクリーンで、2000冊の限定作品。

コットンの再生紙が用いられ、表紙はマーブリングで染められています。一冊ごとに模様が異なるのもハンドメイドならではです。

ページを開くと、縦の長さの異なる4枚のページが、小さいものからレイヤーで閉じられていて、上にめくる方式。

2枚目から4ページ分の大きなイラストが広がります。

ワルリ画はとても繊細で、細い線で描きこまれたイラストの美しさに息を呑みます。

インドは広大ですが、伝統アートも部族が違うと趣がまったく異なるのですね。

まさにアート作品で、ページをめくるのも、そっとになります。


お話は兄弟の実際の経験が元になっています。

ガンジャドの村で自然に囲まれて育った二人。壁に描かれたワルリ画も、あまりに日常的であったために注意をはらうことはありませんでした。

学校を卒業すると、若い人が皆そうであるように、都会に憧れ、片道3時間近くかけてムンバイの学校に通いました。

ムンバイでの生活はとても楽しいものでしたが、そこに住みたいとは思いませんでした。村にいっそう繋がりを感じ、毎日帰れることが喜びとなりました。

村を離れることで、伝統芸術を新たな視点で眺めるようになり、その美しさに気づき、ワルリのアーティストを志すようになりました。古いものと新しいものを結びつけることを思いつきます。

そして、日本の粟島にアーティストとして招待されます。

海外で生活すると、違いの多さに驚かされます。粟島も自然に囲まれていますが、ガンジャドのそれとは大きく異なりました。

海に潜ってみると、見た事も無い魚や生き物に溢れています。

一方で知っている生き物もいて、こんなに遠く離れた場所であっても、どこかで繋がりがあることが感じられました。

人間も同じではないでしょうか。人々の共通点は、未知の深い神秘的な領域に存在しているのかもしれません。


最後のページは、深く暗い海の中、ガンジャドの川と粟島の海の生き物たちが入り混じっている不思議な美しい光景です。

グランフロント大阪の無印良品では、この本の出版社 Tara Books のコーナーがあって、実物も見られるようです。

また、粟島では、日本人アーティストや島民と共作のアート作品が公開されています。コロナが落ち着いたら是非行ってみたいですね。
The Deep
by Mayur & Tushar Vayeda
Publisher: Tara Books Pvt. Ltd.
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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