Sun Moon Star by Kurt Vonnegut & Ivan Chermayeff
無神論者の描くクリスマス Sun Moon Star
by Kurt Vonnegut & Ivan Chermayeff “Sun Moon Star” はちょっと変わったクリスマスの絵本です。
建築家でグラフィック・デザイナーであったアイヴァン・チェマイエフが先にイラストを描き、作家のカート・ヴォネガットがお話を書きました。 アイヴァン・チェマイエフは、身近なところでは海遊館の壁画を手がけています。海の中のシーン、思い浮かんだでしょうか。また、Mobil や MoMA などのロゴをデザインしたことでも有名です。 カート・ヴォネガットは、私も大好きなアメリカの作家です。代表作に「スローターハウス5」「タイタンの妖女」「猫のゆりかご」などがあります。皮肉がきいてユーモラスな文章のSF小説ですが、本人はSF作家と言われるのは好まなかったようです。 これは、ヴォネガットが書いた唯一の絵本です。彼は、無神論者でしたが、ストーリーは、Nativityといわれるキリスト降誕の物語。 日本人で、キリスト教信者でなければ、あまり馴染みはありませんが、映画の中などで子どもたちがよくクリスマスに劇をしている、馬小屋でイエス・キリストが生まれるあのシーンです。 イラストは、タイトルのように、太陽と月と星をベースとしたシンプルで美しいバリエーションです。 これを渡されて、ヴォネガットはどのように感じたのでしょうか。 無神論者なのに、SFではなく、キリスト降誕の物語を選んだのはなぜなのでしょう。彼の想像力に対する挑戦のようなプロジェクトだったのではないかな、と空想してしまいます。 物語の中では、イエス・キリストという言葉は出てこなくて、Creator または It となっています。 Creator of Universe - 宇宙の創造主は地球にやってきて、人間の赤ちゃんとして馬小屋で生まれます。 生まれたばかりで、また眼を持ったこともなかったので、周囲がよく見えません。 そのために、ランプの灯が星に見えたり、ヨセフのおでこが三日月に見えたりします。 水晶のネックレスは、夜空いっぱいの星に見えました。 お母さんのマリアは光り輝く太陽です。 Creator はお母さんの愛情に包まれ、おっぱいを飲んで眠ります。 そして初めての夢を見ます。 そして2回目の夢を、3回目の夢を、4回目の。。。 これはかなり苦しい展開だな、と思ったのですが、Youtubeで本人がこの絵本を読み聞かせているものがあって、ここで笑い声が入っていたので、安心しました。 物語は、即興詩のように展開していきます。 太陽と月と星が合体してしまったシーンもあって、こんなのあり得ないと Creator の眼が寄ってしまったり。 自分だったら、どんなお話をつけるのかな、と考えながら読むのも楽しそうです。 Sun Moon Star
by Kurt Vonnegut & Ivan Chermayeff Publisher: Seven Stories Press/Triangle Square
谷津 いくこ
絵本専門士 絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。 StoryPlace HP:http://www.storyplace.jp Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/ |