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こねこのぴっち(ハンス・フィッシャー)

この愛らしさに抗えるわけがない

こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー(作)
石井桃子(訳)
店内の模様替えをしてから、今回ご紹介する絵本の絵を壁に飾っています。

購入したのはもう随分前のこと。長い間しまい込んでいたんですが、久しぶりに飾りたくなって引っ張り出してきました。

先月に続き、今回もロングセラーのタイトルですので、ご存知の方が沢山いらっしゃるだろうと思います。

あるいは「岩波の子どもの本」シリーズの小さいほうで親しんだよ、という方もおられるかなと思います。

スイスの絵本作家によるもので、70年くらい前に創作された作品です。訳は石井桃子さん。

個人的には画像の通り、大型版のほうがお気に入りです。表紙からしてオシャレ。

画面いっぱいに黒いインクでモチーフが描かれているのに、あえてベースを深緑にしちゃうところとか。

効果的に散りばめた白いキラキラとともに、中央の丸くて明るい部分にタイトルと主役を配することで、スポットライトをあてた舞台のようにも見えるところとか。

なんて洒落てるの!

もちろん中身も半端ないんです。

即興で鼻歌まじりに落書きしたみたいな、軽くて気ままな線。一見するとユルくて未熟にも見えかねないのだけれど、それは作戦です。まるで隙がない。

必要最小限の滑らかな線で、生き生きとユーモラスに描かれた動物たちと、横長で真っ白な画面を、最大限にいかして構成された場面の数々。

どの見開きにも、本当は隅々まで作家の意識が向けられているのに、力みを一切感じさせない。

洗練された見開きの連続に、読む人を喜ばせるためにぜひとも必要な、熟練者ならではの余裕のようなものを感じます。

肩肘を張らず作品に親しんでもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちが伝わってきます。

お話の主人公ぴっちは、兄弟の中でも一番体が小さい子猫です。そのため、ニワトリやヤギ、ウサギなど、そこで暮らすみんなにとって末っ子みたいな存在。

彼らがみんな、ぴっちを愛おしく思っている様子に心が温まります。賑やかでほのぼの。お話の展開も、この上なく親しみやすい内容です。

と、ここまで書いてて気づいたのは、子猫にしろ、末っ子にしろ、その愛らしさにゃあ、誰も敵わんよなあ!ということです。

そのような普遍的事実のもとにある「子猫+末っ子」の合わせ技って!!もはや無敵、かわいいに決まってる。

やっぱり半端ないわー、この作品。

というわけで、私もまんまと虜になっちゃった一人です。この愛らしさに、抗えるわけがない(笑)

お店の壁には、しばらくこの絵が飾ってあります。気軽なインテリアとして楽しむ目的で印刷・額装されたものですが、マットにも絵柄が印刷されてたり、遊び心のあるデザインが気に入ってます。

ご来店頂く機会がありましたら、ご覧になってみてくださいね。
こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー(作)
石井桃子(訳) 岩波書店
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/





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