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Everest by Sangma Francis

エベレストも私たちも繋がっている。

Everest
by Sangma Francis, illusrated by Lisk Feng
今回は初めてノンフィクションの絵本を紹介します。2019年のボローニャ・ラガッツィ賞受賞作品で、日本語を含め10カ国語に翻訳された人気の作品です。

ノンフィクションですが、イラストの色使いやタッチが柔らかくて美しく、興味をかきたてられました。

エベレストというと、世界最高峰で、冒険家が登頂を試みる過酷な山のイメージ。

この絵本では、その成り立ち、環境、生き物、宗教、神話、歴史などの色々な側面が描かれていて、エベレスト登山にまったく興味の無い私も楽しく読む事ができました。


3億年前、地球上の大陸は1つに繋がった巨大なパンゲア大陸でした。

パンゲア大陸は1億年以上かけて分裂し、約5千万年前に今のインド大陸とユーラシア大陸が激しく衝突してヒマラヤ山脈ができました。

エベレストの標高は8,848mですが、その山頂には、4,000万年前の海の生き物の化石があります。雄大なお話ですね。今でも年に10mm隆起し続けています。

エベレストはチベット(中国)とネパールの2つの国にまたがっています。

チベットでは、チョモランマ(世界の母なる女神)、ネパールでは、サガルマータ(大空の女神)と呼ばれています。

絵本は、3,000mまで、3,000m以上、5,400m以上、8,000m以上とだんだん山を登っていく形で進んでいきます。

山の麓から3,000mの世界では、森もあり、特有な動植物が存在します。

シェルパと呼ばれる少数民族も暮らしています。彼らの体は高所での生活に順応していて、エベレスト登山者のサポーターとしても活躍しています。

3,000m以上になると、植物は1.5m以下の低木となり、動物の種類も減ってきます。中でもヤクは哺乳類として一番高所で暮らすことができる貴重な動物で、シェルパの生活を支えています。

8,000mを超えるとデス・ゾーンと呼ばれる世界。酸素濃度が通常の3分の1しかありません。それでも、キバシガラスやインドガンのような鳥は、エベレストを超えて飛ぶことができます。すごいですね!


さて、私はエベレスト、ヒマラヤ山脈にまつわる神話や伝説に興味があってこの絵本を手にしました。その1つがガンジス川の伝説です。

ガンジス川、Gangaはパワフルな女神です。昔、Gangaは天上を流れていましたが、王子の願いで地上に流れるようになったというお話です。なるほど、ヒマラヤ山脈は天上のようです。

他にもシャングリラのモデルだとされるShambhalaの神話があります。

Shambhalaは、ヒマラヤのどこかにあるユートピア。心の綺麗な人だけが見つけて入ることができます。王Kalkiの統治のもと、人々は幸せな生活を送っています。世界が暗闇と強欲に満たされたとき、Kalkiの軍が現れて世界のバランスを取り戻すために戦うと言われています。

エベレストの初登頂が成功したのは、1953年、67年前です。その後、装備は飛躍的に進化し、より安全に登山ができるようになりました。

それでも登頂には、数百万円から一千万円以上にもなる費用と、1〜2ヶ月の期間が必要です。高所に適応する訓練も必要ですし、命を落とす危険もあります。

しかし、近年ではデス・ゾーンで登山者の渋滞ができるほど多くの人が訪れ、ゴミの問題も深刻になっています。こんな場所でまで、と思うと悲しくなります。聖なる山を大切にしたいですね。

絵本の最後は、もしエベレストが喋れたとしたら何を語るでしょう、という問いかけになっています。

神々のお話でしょうか、登頂しようとした勇敢な人々の話でしょうか、または伐採されてしまった麓の森林のことや温暖化で溶けてしまった氷河について嘆くでしょうか。

地球上のすべてのものは繋がっていて、何らかの形で影響しあっています。エベレストも私たちもその一部。

The changes we make to the world of Everest shapes the story that it will tell.
Everest
by Sangma Francis, illusrated by Lisk Feng
Publisher: Flying Eye Books
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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