喜劇 レオンスとレーナ(ゲオルグ・ビューヒナー)
紡がれた言葉一つ一つにセンスがにじむ 喜劇 レオンスとレーナ
ゲオルグ・ビューヒナー 以前もふれたでしょうか、私が文楽(人形浄瑠璃)に興味を持って4年ほどになります。今年の春の公演は、「義経千本桜」を1日通しで楽しめるプログラムになっていて、ぜひとも観たい!と思っていたのですが、全公演中止になってしまいました。 残念ですが安全第一。今は自粛すべきときで、この次の公演を楽しみにしたいです。
こんな私も、子供の頃はというと、西洋の物語に登場するお姫さまにより強い憧れを抱いていたんです(たぶん、そっちのが一般的ですよね??)。ということで、今回は戯曲に親しめる絵本をご紹介したいと思います。 戯曲や浄瑠璃として書かれた文章は、舞台で表現することを前提にしたものですが、文学としての側面を持ち合わせています。ドラマの展開だけでなく、紡がれた言葉の一つ一つに作家のセンスがにじみます。 この絵本の原作となっている戯曲にも、巧みな言葉遊びがふんだんに用いられています。そこに込められた思いを、丹念に、翻訳するようにして描いたという、ツヴェルガーの美しいイラストが存分に楽しめる一冊です。 政略結婚させられるはずの王子と王女が、どちらもその運命を拒み、それぞれの国から逃げ出します。しかし道中の宿屋で偶然巡り合い、二人は結局、恋に落ちるというもの。タイトルにあるように、これは喜劇です。 冒頭であらすじが語られますので、にやついてしまうくらい安心して読み進めることができます。 そもそも結ばれることになっていたにも関わらず、より双方にとっての幸せな出会い方を経て結ばれる二人。目を凝らせば、ロープ並み?の立派な赤い糸が見えてくるんじゃないかと思えるほどの安定感が、おかしみを誘います。 とはいえ、大団円を迎えるにあたっては少し工夫が必要。二人とも逃げ出してきたからです。 そこで注目すべきが、従者のヴァレーリオ。彼は、首尾よくハッピーエンドとなった暁には、自分を枢密顧問官に任命してもらう、という約束を(ちゃっかり)王子から取り付けた上で、一計を案じます。 これがなかなか興味深い。やるじゃん、ヴァレーリオ!グッジョブ! 彼が枢密顧問官になれば、国の行く末も安泰でしょう。 この絵本には、巻末に短い解説が添えられているんですが、ここではそれに触れずにおきます。ただ、浄瑠璃も含め、何百年も前に創作された古典作品が気づかせてくれるのは、昔と変わらず、今も人はそれぞれ悩みを抱えているし、脅威や困難に直面してもいるということ。 一方で、私たちは今、昔の人が目の前にある困難を克服したり凌いできた、その証として生きているんだということです。君たちもがんばれって、励まされている気がします。 この記事が公開になる時点では、まだ私のお店は休業していると思いますが、何より今は、当店の常連さんをはじめ、皆さんに安全にお過ごし頂きたい気持ちでいっぱいです。 一日でも早く、当たり前の日常が取り戻せますように。引き続き、できることを心掛けていきましょう! 喜劇 レオンスとレーナ
ゲオルグ・ビューヒナー(原作) リスベート・ツヴェルガー(絵) ユルク・アマン(翻案) 小森香折(訳) BL出版 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |