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まめまめくん(デヴィッド・カリ)

「みんなと違う」より「みんなが違う」かもしれない

まめまめくん
デヴィッド・カリ(文)/ セバスチャン・ムーラン(絵)
昨年の7月頃から半年間、行政が主催する中小企業向けの勉強会に初めて参加しました。毎月1回、取り組んだ宿題持参で臨み、具体的なアドバイスを受けられるというもの。普段一人でやってると、本の知識だけでは課題の克服が難しい。直接学べる場って貴重だなあと実感しました。

今回ご紹介する作品は、大多数と違う個性を持って生まれたがために、大多数と違うように見える日常を送っているものの、やがて自身にぴったりの仕事を見つけたことで、楽しく充実した日々を手に入れた小さな青年のお話です。

彼の何が大多数と違うのか?彼は豆粒くらいの大きさで、見るからに小さすぎました。名前は「まめまめくん」。小人の世界を描いているのではなく、どうやら彼だけが極端に小さいようです。

さすがにここまで周囲と違った個性を持った主人公なら、どんな人がこの作品を読んでも、彼の日常に共感できる人はいないように思います。「みんなと違う」ということを説明する上で、非常にわかりやすい設定です。何より、ちっちゃくてかわいいのが、読んでて楽しい。

イラストは、鉛筆で丁寧に陰影をつけた線画をスキャンして、必要な箇所だけデジタルで着色したように見えます。すっきりしつつも柔らかさと温かみが伴って、ストーリーとよく馴染んでいて素敵です。

彼が学校に通い始めたことで、自分の個性が相当独特なものだと気づき、疎外感に戸惑う場面も描かれています。

出版社さんによる趣旨は、「みんなとちょっと違う子にエールをおくる絵本」ということなのですが、私個人の感想としては、このようにも思いました。

彼の心が味わった疎外感は(程度の差はあっても決して珍しいものではなく)誰しも多少なり経験がある感覚ではないかなあ?と。

彼の心情に共感している自分に気づくことで、次第に「もしかして?」と感じたのは、「みんなと 違う」より、実際のところは、「みんなが 違う」かもしれないなあ、ということ。

ここで言う「自分以外のみんな」は、本当に同じ? どのくらい同じ? 互いに知らないだけで、実は同じような疎外感や劣等感を味わった経験を、自分だけでなく、みんな何かしら持っているんじゃないかしら?

周囲とどんなに違っていようが、似ていようが、自分の個性にちゃんと気づいて、個性に合った仕事につくこと。それこそが、誰にとっても大切なこと。それを叶えたまめまめくんの、仕事に取り組む様子は実に誇らしげです。

私が参加した勉強会でご一緒した企業の皆さんも、ご自身の個性に合ったお仕事を維持するためにと奮闘されている方ばかりだったようで、皆さんとっても朗らかでした。

実は今日(2月1日)で、夫婦の仕事を持ち寄って一つの会社にしてから、丸10年となりました。 昨年教わったことを自分なりに実践しながら、これからも活動を維持していけたらと願っています。
まめまめくん
デヴィッド・カリ(文)/ セバスチャン・ムーラン(絵)
ふしみみさを(訳)
あすなろ書房
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/





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