きみがしらないひみつの三人(ヘルメ・ハイネ)
健気な様子に愛おしさは増すばかり きみがしらないひみつの三人
ヘルメ・ハイネ(著) 昨年の夏からピラティスに週1回ペースで通っています(ここで話題にしたことは、まだなかったような?)。
ピラティスは、日常生活で生じる身体の歪みをニュートラルに整えるためのエクササイズです。教わっているのは骨格や体幹のことなんだけど、そのことが、思考の偏りにも気づかせてくれたりするから、不思議だなあって思います。 今回ご紹介するのは、体についての絵本です。考えること、感じること、食物を摂取すること、を擬人化したもの。そこに住み着いている、妖精のようなイメージでしょうか。 目に見えない体の機能について、子供たちの理解を促すための手法に見えるのですが、実は、それだけで終わっていないのが、この作品の素敵なところ。 きみが産まれたら、彼らはやってきます。 アタマはかせは、例えば夜眠る間に記憶を整理してくれます。ハートおばさんは、自然とわいてくる色んな気持ちの世話をしてくれます。いぶくろおじさんは、入ってきた食べ物を、毎日せっせと必要な形にかえてくれる。 描かれている三人はみんな働き者で、どの場面もいきいきと表情豊かに描かれています。 このあたりまで読んだだけでも「三人とも、私(きみ)のために頑張ってくれてありがとう!」という気持ちが少々わいてくるのですが、本当に読んで頂きたいのはこの先です。 長い人生の中で様々な経験を重ねているとき、彼らはずっと一緒にいて、きみを応援し続けます。成長してゆくきみの後を、ちまちまと追いかけ続ける三人。その健気な様子に、彼らへの愛おしさは増すばかり。 すると気になってしかたないのは、じゃあ私(きみ)が死んだら、彼らは一体どうなってしまうのか?ということ。 作者は、その疑問を放置したままにはしません。そのうち二人が担う素敵な役割に、「ああ、人が生きるって、そういうことだよね」と、大いに頷きたくなります。 そして大人の読み手にとって、この擬人化は、自身の体を客観的に省みるきっかけになります。 沢山悩んだり、沢山抱え込んだり。様々な無理を重ねて、彼らに負担をかけちゃってるかも。こんなに可愛らしい子たちを、げっそりさせたら不憫だな…。 頑張り過ぎてしまうのが当たり前になっちゃってる人なんかだと、ぜひとも自分の体が参ってしまわないうちに、こんな具合に読んで欲しいなあ、と思ったりします。 要領よくサボってる方は、どうぞそのままで!(笑)言葉は悪いけれど、自分を労る時間もすごく大事。ただでさえ、少々の無理は承知でやっていかないと、渡ってゆけないご時世ですもの。だからどうぞ、そのままで。 個人的には不摂生も控えなくちゃ、と思います (なかなか直りませんが) 。この先の生きかたを、ちょっぴり整えてくれる作品です。 きみがしらないひみつの三人
ヘルメ・ハイネ(著) 天沼春樹(訳) 徳間書店 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |