ガストン(ケリー・ディプッチオ)
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![]() 「こうあるべき」より「こうありたい」 ガストン
ケリー・ディプッチオ(文) クリスチャン・ロビンソン(絵) 先日、また用があって東京へ出かけていた時のこと。訪問先の方に、「大阪は、北と南の間に壁(あるいは溝)があるんですか?」と聞かれました。最近は、テレビでよくそういう話題を扱っていますよね。
私は「南からみると、北はシュッとしてる印象があります」と答えたんだけど、まあ、大阪は南北に広がっていますから、単純に移動の限界も伴うわけで。 地域が持つ風土の違いだけでなく、育った家庭環境、生まれ持った外見の違い。個人をとりまく環境の違いについて、朗らかに、ユーモアたっぷりに扱っている作品が今回ご紹介する絵本です。 プードルの子犬たちの中に、ブルドッグの子犬が一匹紛れています。それがガストン。お母さんはもちろんプードルで、お行儀の良さを大切にした子育てがモットー。 ガストンは他の子より体が大きくて、口も大きいから、静かに歩いたり、こぼさずお水を飲んだりすることが上手にできないけれど、その分みんなよりも頑張り屋さん。 それが自分でも誇らしく、お母さんもちゃんと認めてくれている。ガストンの屈託のない笑顔がその証しです。 春になって子犬たちが少し成長すると、みんなで公園へ。すると、一匹だけプードルの子犬が紛れた、ブルドッグの親子らと出会います。 のびのび元気いっぱいに育つことを大切にしているブルドッグのお母さんと、お行儀の良さを大切にしているプードルのお母さん。 元気いっぱいに育てられたプードルの子犬アントワネットと、お行儀良く育てられたブルドッグのガストン。何だかややこしいぞ。 二匹の母犬だけでなく、本人たち自身も「まさか……そんな!」と出自に関わる重大な事実に気づきます。 その先、一体どうなるの…?! 愛嬌たっぷりのとぼけた(いい意味で!)イラスト(もちろん文章も)の絵本にあるまじき展開。 昭和のテレビドラマを思い出させるような、ややこしい空気がほんの一瞬漂って、若干ハラハラさせられますが、もちろん、そのようなノリに突っ走ることはありません(個人的には昭和のテレビドラマのノリも好きですよ、笑) その後のハッピーエンドに至るプロセスが素敵。二匹の母犬とも、よくできたお母さんでした。「こうあるべき」というニュアンスより「こうありたい」っていう気持ちにさせてくれる、そんな選択を彼らは実践していきます。 南北であれ、東西であれ。のびのびした環境には、新しい発想を恐れず形にしていける良さがあり、お行儀のよい環境には、そうして形になったものを律し鍛え上げてくれる良さがある。私自身は、そんなことを思ったりしています。 堺っていう、のびのびしてる側?の環境にせっかく馴染んでおりますゆえ、新しい発想を大切にしつつ、たまにシュッとした場所にも飛び込みながら、お店の営業や活動を続けていけたらいいなあと思うこの頃です。 ガストン
ケリー・ディプッチオ(文) クリスチャン・ロビンソン(絵) 木坂涼(訳) 講談社 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |