ワイズブラウンの詩の絵本(マーガレット・ワイズ・ブラウン)
当たり前の情景が美しく輝き出す魔法の言葉 ワイズブラウンの詩の絵本
マーガレット・ワイズ・ブラウン 例年2月に入ると、確定申告の準備をします。棚卸の際には、「うちには在庫があるけれど、世の中的にはすでに古本しか流通していないもの」というのが、ちょいちょい見つかります。
ここでは、新刊を扱う本屋さんで買える本の中からご紹介をしてるので、そういったタイトルは除外。さらには、これまでにご紹介した中にも、現在は古本でしか買えないものが複数あります。 詳しい人が断然おすすめ!っていう作品ほど、世間的には売れにくいと言われています。残念ながら、その実感も確実にあって。 でも、全く救いがないかといえば、そうではありません。品切れになってから、さらに一定の年数を経て、懐かしむ声や惜しむ声に後押しされたりすると、ずっと品切れだったものが復刻版や新装版としてまた販売される、というケースがあります。 今回ご紹介する絵本は、昨年新装版として発行された作品です(ごめんなさい、写真は新装版でなく2006年発行の本です)。 詩の絵本というタイトル通り、いくつもの詩が、内容によって4つに分けて収録されています。 草むらをのぞくと現れる虫たちの様子、身近な生き物の様子、海や森でありそうな風景。うるさいカラス、じっとしてるヘビ、玉ねぎを切ったら涙が出てくること、など。 こう書くと、もしかしたらこのように感じられるかも。 「とるに足らないことばかりじゃないの。」 そう。題材は、本当にどうでもいいことばっかりなんです。 なのに、ワイズブラウンの言葉はまるで魔法のよう。一言一言、言葉を追いながら、色調を抑えた端正なイラストにふれ、ゆったりとした気持ちで作品に心を寄せると、当たり前の情景が初めて触れた世界のように輝き出します。 ずっと昔、幼い頃に「これなあに?」と感じた気持ちが蘇ってくる。すっかり嫌悪してたカラスやヘビのことだって、何だか可愛らしく思えてきます。 何気ないことに心をくすぐられる心地よさ。自らの力で美しさを見いだし、全てのものを愛おしく感じようとする喜び。 作者二人による美しい言葉と絵が、そうした経験へと導いてくれる。他愛ないものとの接し方や、ものの見方を教えてくれる。 どうでもいいことなだけに、感性のきらめきは一層際立ちます。何にでもこんな風に心が反応できたら、どれだけ人生が輝くだろう。 新しい元号が発表されました。「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められているとか。 とるに足らないことにも、美しさや愛おしさを見いだしながら生きてゆこう。きっとその先には、新しい元号に相応しい社会が待っていると信じて。 "売れにくい本"に休眠期間をもたらさないよう、頑張らなくちゃ! 気持ちを新たにしました。 ワイズブラウンの詩の絵本
マーガレット・ワイズ・ブラウン(作) レナード・ワイスガード(絵) フレーベル館 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |