サイモンは、ねこである。(ガリア・バーンスタイン )
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![]() 2月といえば「にゃんこ月間」 サイモンは、ねこである。
ガリア・バーンスタイン (著) ネコが好きな方にとって、2月といえば「にゃんこ月間」。岩合光昭さんが監督をされた映画も2月22日が公開初日とのことで、私も楽しみにしているところです。
そして、この記事の公開は2月2日ということで、ささやかながら私も「にゃんこ月間」を盛り上げるべく?ネコにちなんだ絵本をご紹介したいと思います。 とはいえ、実はネコだけでなく、ネコ科の猛獣オールスターズがチャーミングに描かれた、楽しい作品です。 サイモンという名の若いネコが、ライオンやチーター、トラなどのネコ科の猛獣が集う場に、ちまちまのこのこやってきて言います。 「こんにちは。ぼくたち、似てますね」
ページをめくると、あっけにとられた猛獣たちの顔。
まためくると、バカバカしいとばかりに大笑いしている猛獣たちの顔。 アニメーションのようなテンポの冒頭部分。このテンポを生み出すために、本文30ページのうち、あえて6ページも使う手法に、作家の大胆なセンスを感じます。 百獣の王ライオン。世界一俊足なチーター。ピューマに黒ヒョウ、そしてトラ。どの猛獣もサイモンに取り合わず、似てるはずなどないのだと、諭すように“格の違い”を語ります。 「おまえは、ちびでねずみいろだ。どっちかといえば、ねずみに似てるんじゃないか」
サイモンはしょんぼりしつつも、持論(人間から見た一般論)を展開します。立派なヒゲ、ながいしっぽ、するどい爪、暗闇でも見える目。小さいけれど僕にもある、と。
この作品のもう一つの魅力が、目の表情の豊かさです。あっけにとられた時の目。ちびで愚かな奴だと同情する目。「言われてみれば確かに…」と察した時の、言葉に詰まった目。 彼らの心情の変化に嬉しくなって、お尻をプリプリ上げて、にっこり微笑むサイモンのキュートな目も。 サイモンはいかにもネコらしく、卑屈という言葉を全く知らない振る舞いで、ちゃっかり彼らと仲良くなりました。 猛獣たちは、自分がもし小さな体だったら、サイモンと同じ行動がとれただろうか?と考えを巡らせたかもしれません(さすがに猛獣としてのプライドが許さない?顔には出ていませんけれど)。 どこかの大国に、強大な権力と富を握る人々がいる一方で、アマゾンの僻地には、未だ文明を受け入れることなく、独自の暮らしを営む謎の部族が存在するのだそうです。どちらも似てるどころか、みんな同じ「人類」ですからね。 私たちのような小市民には、彼らがどのような日常を送っているのか、さっぱり想像がつかないわけですが、同じく人類なのだと考えることで、多少なり心の距離は、縮まるかしら…? 日常にネコがいると、つい物思いにふけってしまうから、不思議。 この絵本もきっと、そうやって生まれた素敵な作品の一つなのだと思います。 サイモンは、ねこである。
ガリア・バーンスタイン (著) なかがわ ちひろ(訳) あすなろ書房 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |