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La Princesa Noche Resplandeciente by Philip Giordano

スペイン語版のかぐや姫

La Princesa Noche Resplandeciente
by Philip Giordano
先日、西宮市大谷記念美術館で毎年開催されているイタリア・ボローニャ国際絵本原画展を観に行って来ました。

過去の受賞作品絵本も展示されていて、目をひいたのがこの作品でした。

スペイン語版のかぐや姫。とっても不思議な世界観の絵本です。

おじいさんは二頭身の妖怪のようだし、かぐや姫もおかっぱ頭で無表情。奇妙な姿をしています。

かぐや姫の周囲にも、不可思議な姿の生き物が複数寄り添っています。お付きのものでしょうか。他の人には見えない様子。

物語は忠実に再現されています。おじいさんが竹の中から見つけた女の子を連れ帰り、自分の子どもとして大切に育てます。

かぐや姫は、とても美しく成長し、5人の王子から求婚を受けますが、それぞれに手に入れるのが困難な贈り物を要求します。

ある者は贋物を準備して見破られ、ある者は旅の途中で病気になり、ある者は見つける事ができませんでした。

噂を聞いた帝が、かぐや姫のもとを訪れて恋に落ちるのですが…

帝を気の毒に思ったかぐや姫は、月に去る前に不死の薬を贈ります。

帝は、かぐや姫がいないのに不死になっても仕方がないと、一番高い山、月に一番近い場所でそれを燃やすように命じます。

薬は煙をたてて燃え上がり、山は、不死−富士山と名付けられました。

竹取物語は、ロマンティックなお話だったのですね。

イラストレーターのPhilip Giordanoは、父親がスイス系イタリア人、母親はフィリピン人です。

2010年に新設された、スペインのSM(サンタマリア)財団による「ボローニャSM出版賞」の第一回を受賞しました。

ボローニャ展入選者の中から35歳以下の若いイラストレーターに奨学金として3万ドルが与えられ、さらにSM出版社から絵本を1冊出すことができる賞です。

このため、著者がイタリア人、物語は日本のものですが、絵本はスペイン語で描かれています。

Philip Giordanoは、日本を何度も訪れ、住んでいたこともあります。宮崎駿のファンで「風の谷のナウシカ」に影響を受けたということ。

初めてこの絵本を見たとき、『千と千尋の神隠し』が思い出されました。

イラストには、ヨーロッパ的なものと日本的なものが入り混じっていて、また緻密なものと、シンプルで漫画的な表現も混じり合っていて、奥深く美しく、そしてユーモラスでもあります。

かぐや姫−竹取物語は、日本最古の物語と言われていますが、考えると不思議なお話ですよね。

かぐや姫は、何か罪を犯したために、地球に来なければならなかったのですが、どんな罪だったのでしょう。

「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーで2013年にスタジオジブリが『かぐや姫の物語』の映画を作っているのを見つけました。

どんどん繋がっていくようです。この映画も観なければなりません。

知っているお話なので、スペイン語でも抵抗なく親しめます。アートなイラストを眺めながら、昔話に思いを馳せるのも楽しいのではないでしょうか。
La Princesa Noche Resplandeciente
by Philip Giordano
出版社: Fundación Santa María-Ediciones SM
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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