ふゆねこさん(ハワード・ノッツ)
初めて冬を迎える猫と、子どもたちのふれあいが温かい。 ふゆねこさん
ハワード・ノッツ(作・絵)、 まつおか きょうこ(訳) 「ふゆねこさん」という言葉の響きを耳にしただけでも、何だかほのぼのとしてしまいますが、今回の絵本は、夏の野原で生まれた若い猫が、初めて冬を迎えるお話です。表紙はカラーですが、本文はモノクロ。45年前に作られた作品です。
舞い始めた初雪に、子供達がはしゃいでいます。そこに、灰色の猫が一匹。 "ひらひら ふってくる しろいもの。" まだ冬を知らない猫を通して語られる風景は、読み手にも冬の景色が新鮮なものに映ります。 子供達と野生の猫。互いに興味を持ちながらも、なかなか距離は縮まりません。そこへ、冬の寒さが後押しをします。 子供達は猫の身を案じて、飢えてしまわぬよう毎日食べ物を与え、名前をつけて呼びかけます。子供達の思いやりと、日々増してゆく寒さのおかげで、少しずつ少しずつ、互いの距離が縮まってゆきます。 子供達はいつも機嫌よく、根気よく時間をかけて猫が馴れるのを待ちました。決して無理強いはしません。この作品では、その過程がとても丁寧に描かれています。 実際の人間関係の中では、時を惜しんで言葉だけで思い通りにしようとすることも、仮に言葉や行動を尽くしたとしても、どうにもかみ合わなくて、前に進めずイライラすることも、しょっちゅうあります。 でも本当は誰だって、丁寧に焦らずに、誰かとの良好な信頼関係を築きたい気持ちを持っているはずです。この作品は、そんな気持ちに温かい灯をともしてくれます。 実は我が家でも、めちゃめちゃ臆病な猫を飼っています。年齢的にはオバサン猫ですが、臆病なため、私たち夫婦だけの時にしか姿を見せないし、私たち以外の他の誰にも甘えません。そこがまた可愛いんですが(親バカならぬ、飼い主バカです)。 彼女も馴れるまで時間がかかりました。飼い始めた頃のことが懐かしく思い出されます。 猫を飼っている方にはもちろん、クリスマスの風景も描かれているので、冬のギフトにおすすめの一冊です。 ふゆねこさん
ハワード・ノッツ(作・絵) まつおか きょうこ(訳) 偕成社 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |