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The King's Stilts by Dr. Seuss

なんだかとっても身につまされる現実的なお話

The King's Stilts
By Dr. Seuss
Dr. Seussが大ブレイクする前の初期の絵本ですが、私にとってタイムリーなお話だったので印象に残りました。

“Stilts”は竹馬です。竹では出来ていませんが、表紙の絵にあるような遊具です。数回しか乗った事がありませんが、少し視点が高くなるだけで、世界が違って見えて楽しいですよね。

King Birtramは、ちょっと変わった問題を抱えるBinn王国の王様です。Binnは海に三方から囲まれていますが、海抜が低く、Dike Treesが海水が王国に流れ込むのを堰き止めています。

Dike Treesは隙間なく並んでいて、その頑丈でコブだらけの根が海から王国を守っているのでした。

この根を好物にしているのがNizzardsという悪そうな鳥たちです。NizzardsからDike Treesを守るのがPatrol Cats “P. C.”の役目です。

P. C.は昼と夜のシフトで500匹ずつが勤務しています。王様の指揮のもと、よく訓練され、待遇は王様以上。最高級のシェフの料理を食べ、ブラッシングされ、ヒゲもきちんと手入れされています。

王様は朝5時に起きて、お風呂も、朝食も、大量の書類にサインをしながら済ませます。P. C.の世話に目を配ったり、王国中のDike Treesを見回ったりと仕事は山積みです。

でも、5時になると仕事はおしまい!王様はにっこり笑って言います。
”Now, it’s time for some fun!”
赤い竹馬に乗って夢中で町を駆け抜けます。住民たちは、王室のローブ姿で竹馬に乗って走る王様を見てちょっと奇妙に思うものの、いつもハードワークをこなしている王様を知っているので、好きなように楽しんでもらおうと考えます。

絵本の中で繰り返し出てくるフレーズは、
"When King worked, he really WORKED…but when he played, he really PLAYED.”
当たり前の事だけど、ちょっと忙しくなると忘れてしまいがち。

大きな心配を抱えながら、忙しくも楽しい日々をおくっていた王様ですが、ある日Load Droonにstiltsを隠されてしまいます。Load Droonは、人が楽しそうにしていたり、笑っていたりするのが大嫌いなのです。

Load Droonは、King Birtramに王様らしく振舞うべきだと諭します。王様は、納得するものの、すべての気力が無くなって、廃人のようになってしまいます。

仕事に集中できなくなり、Patrol Catsの指揮にも身が入らず、猫たちは従わなくなって怠けだします。Binn王国は危機的な状況に!

なんだかとっても身につまされる現実的なお話ではないでしょうか。

楽しみが無いと仕事にも集中できません。集中する気力が無いと時間をかけて働いても、ほとんど成果が得られません。時間の使い方を工夫しても、気力が伴わないとあまり意味が無さそうです。

私は最近、あと1ヶ月だけ、このプロジェクトが完了するまで、この試験が終わるまで、と楽しみを先送りにしたために、とっても疲れてしまいました。

忙しい時期はずっと続くのだから、日々楽しんで、毎日の生活を大切にしたいですね。

King Birtramは、page boyのEricの助けでstiltsを取り戻し、Binnは無事に平和を取り戻しました。

子どもの頃に読んだら、Binn王国の不思議な設定にワクワクしただろうと思います。

1000匹の猫に守られている国のお話。Dr. Seussのイラストは、生き生きしていて、動き出しそう。いつもアニメーションを見ているように感じます。見かけたら是非ご一読ください。
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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