もりのこびとたち(エルサベスコフ)
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![]() 伝わってくるのは、何気ない日常に対する作者の眼差し もりのこびとたち
エルサ・ベスコフ(著) 子どもの頃の記憶を手繰って、まず先に思い浮かぶのは、おやゆび姫とか一寸法師みたいに小さくなってみたいと考えていた気持ちです。
今でも小さいものは大好きで、精巧なミニチュアなんかを見るとときめいてしまいます。私が企画しているミニチュアの本が作れる工作キットも、それを大いに反映した結果です。 今回ご紹介するのは、森の小さな住人を描いた北欧のお話。その子供たちが主人公なので、さらにちっちゃな存在です。 1910年発表(100年以上前!)の古い作品のせいか、片面はモノクロで印刷されており、文章も最近の絵本と比べれば長い印象ですが、易しい言葉遣いの他愛のない物語なので、さくっと読めてしまいます。 彼らの1年を通した日常生活が描かれているのですが、その生き生きとした具体的な描写が魅力です。 母親と子供たちは、デザイン性に優れた(可愛らしい上に、いざという時周囲に紛れることもできる)ベニテングタケみたいな帽子をかぶっています。 父親は家族を守るため、頑丈な松かさでできたとんがり帽子をかぶり、時には松かさの鎧に身を包み、天敵を退治するのです。 ワタスゲのふわふわを紡いだ糸で衣類を作り、採取したキノコは干して保存食にします。森の小動物たちとは共同生活が営まれており、月が明るい夜は、岩陰に時折現れる妖精たちと戯れます。 実際に彼らが存在したなら、きっとそうするよねっていう、彼らなりの生活の知恵に満ちた情景。そこから伝わってくるのは、何気ない日常に対する作者の眼差しです。 自然の恵みに感謝し、しなやかにたくましく生きていく。およそ100年前の人々の暮らしを思えば、ここに描かれた風景は、当時の作者や読者にとって、私たちの想像以上に身近なものだったかもしれません。 彼らの日常に春が訪れて物語は終わります。子供たちは春の訪れが嬉しくて仕方ありません。 私たちも2月ともなると春が待ち遠しくて仕方ありませんけれど、今年は雪も多く、もうしばらく寒い日が続きそうな気配でしょうか。皆さまどうぞ暖かくしてお過ごしくださいね。 もりのこびとたち
エルサ・ベスコフ(作・絵) おおつか ゆうぞう(訳) 福音館書店 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |