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Cloud Tea Monkeys by Mal Peet & Elspeth Graham

Cloud Tea Monkeys
By Mal Peet & Elspeth Graham
今年も残すところあと1ヶ月と少しになってしまいました。

今年は申年ということで、年初に猿の出てくる絵本を探していてたどり着いたのがこの絵本でした。

中国の民話を元にしたお話です。

Tashiは、母親と山の麓の小さな村で暮らしています。村の女たちは皆山の上にあるお茶のプランテーションで茶摘みの仕事をしていて、早朝から大きなバスケットを頭から下げて山を登ります。

Tashiも毎日母親と一緒に山を登ります。プランテーションは遠いのですが、女たちの楽しげな噂話を聞きながら歩くのはTashiにとって楽しい時間でした。

農園では意地悪な監督が待ち受けています。小男で気難しくて、皆がとうに分かっていることを長々と命令します。

女たちは広大なプランテーションで、命じられた場所のお茶を摘みます。女たちが働いている間、Tashiはこっそり猿たちと過ごします。ランチをいつも分けてあげます。

ある日Tashiの母親が病気になってしまい仕事に出かけられなくなってしまいました。次の日になっても様子は良くなりません。薬代を稼ぐため、Tashiは代わりに茶摘みをすることを決心しました。

しかし、お茶の木よりも小さいTashiが茶摘みをしようとしているのを、監督は馬鹿にしてバスケットを蹴飛ばします。近くで見ていた叔母さんは、監督に嫌われないために、見て見ぬ振りをします。

Tashiが泣いていると、猿たちが集まってきます。そしてTashiのバスケットを持って去っていくのでした。

Tashiは疲れ切って眠ってしまうのですが、猿たちは、バスケットいっぱいのエメラルド色に輝く美しいお茶の葉を持ち帰ります。

そこに籠に乗ったRoyal Tea-Tasterがやってきて…

Tea-Tasterがお茶をテイスティングする様子がとても詳細でコミカルに描かれています。著者がイギリス人の夫婦だからでしょうか。

大きな鼻で何度も色んな嗅ぎ方をしたり、大きな音を立てて啜ったり、うがいをするみたいにしたり、頰を片方ずつ膨らませてみたり。

猿たちの集めてきたお茶は、人間がとても摘みに行けないような高所に育つ貴重なCloud Teaでした。

風景や人間の描写が生き生きとして素晴らしく、風刺も効いていて、大人が読んで楽しめるお話です。実際の様子が目に浮かぶように感じられます。

お茶の葉は現代でもすべて手摘みなのですね。機械で摘むと新しく芽が出るのに時間が掛かってしまうためだそうです。

それを思うと少し考えさせられてしまうのですが。

ヒマラヤの不思議なお話を是非お楽しみください。
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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