ぼくはきみで きみはぼく(ルース・クラウス)
ぼくはきみで きみはぼく
ルース・クラウス (著) モーリス・センダック (イラスト) 江國 香織 (翻訳) 今回ご紹介するのは、去年の今頃、関西で行われた本の展示会で見つけて、小躍りしたくなっちゃうくらい嬉しかった作品です。
日本語で楽しめるようになったなんて! 嬉しくて、その場にいた版元の方に声をかけたら、やはり、念願かなったといわんばかりに何とか色々な条件が整って発行するに至ったんですよと、ちょっぴり誇らしげな笑顔で答えてくださいました。 このこは いま ともだちを まっているところ まっていて もっと まっているの こうして始まるこの作品は、ルース・クラウスとモーリス・センダックのコンビによるものです。 同じコンビによる絵本は、他にもいくつか翻訳され、ロングセラーとなっていますが、私はこれがお気に入りで、英語の本を持っていました。 絵本ですから、英語でもそれなりに楽しめるわけですが、やっぱり、本当なら日本語で楽しみたかったし、色々な方に親しんでもらいたい気持ちがあったのです。 さて。次のページをめくると、こう続きます。 ―はしったら、 ―ぼくもはしる。 ―とんだら、 ―ぼくもとぶ。 さっぱり意味がわからないですよね。でも、これがこの絵本の一番の魅力。 この作品には、一貫したストーリーがあるわけではありません。 ただただ、無条件に誰もが愛おしいと感じるような、子供達の仕草や、やりとり、イマジネーションを、全ページにわたって、ひたすら自由にレイアウトすることで、友情や愛情のかけらを丁寧にコラージュしたかのような、スクラップブックのような絵本なのです。 そのため、とても唐突な展開の連続ともいえるのだけれど、そのパチパチとスイッチングするような感覚も、不思議と心地いいんです。 適当なページをたぐって、そこから読んだって、一向に構わない。子供の頃って、これに似たテンポで過ごしていたかも。そんな感覚をおぼえます。 そして、綴られた言葉の瑞々しさ。 絵本のトビラをめくるとまず、沢山の人物に対しての感謝の意が記されていますので、実際にその言葉を発した子供達の名が連ねられているのかもしれません。 それら瑞々しい言葉をいかにも発していそうな、子供達の純粋で生き生きとした様子を、センダックがペン画で描いてるのですが、そういえば全部モノクロだったなあと、後ではっとするほどに、無邪気で楽しい雰囲気が、作品全体からキラキラと溢れています。 子供達の言葉の数々が、この名コンビの感性を刺激し、このような印象的な絵本がつくられたと思うと、なんて素敵な化学反応だろう!と感嘆せずにはいられません。 そして、読んだ人がそれぞれに持つ、幼い頃の記憶と反応することで、それぞれの心にまた還元されていくといいな、などと、個人的には思うわけです。 ちょうどこれからクリスマスシーズンということで。大切な友人へのギフトなどに、いかがでしょうか? ぜひともおすすめの1冊です。 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |