エマおばあちゃん(ウェンディ ケッセルマン)
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![]() エマおばあちゃん
ウェンディ ケッセルマン (著) バーバラ クーニー (イラスト) 今年はここ数年と比較して、秋の訪れが早かったような気もしつつ。私は、秋が一番好きです。
夏の暑さから解放された爽やかさがたまらなく心地よくて。普段なかなか起きてくれないやる気と集中力がちょっとだけ元気になって、ウズウズと何かしたくなるような、そんな感覚も、ちょっと心地いいなと思います。 ということで今回は、ウズウズした気持ちにちなんだ作品、「エマおばあちゃん」をご紹介します。前回と同じく、絵の担当はバーバラ・クーニーです。 猫と一緒にのんびり(だけどちょっぴり寂しい)一人暮らしをしているエマおばあちゃんが、齢72歳にして絵を描きはじめ、認められ、以後、寂しさを感じることなく、充実した毎日を過ごすようになるというお話です。 きっかけは、家族からのプレゼント。 ふるさとの村の絵だよと、一枚の風景画をプレゼントされるのですが…それは、自分の記憶とかけ離れた風景でした。 「違うんだけどなあ」と思いつつ、家族から貰ったものだからと壁に飾り続けましたが、どうにもしっくりこないので、かえって「本当はこうなのよ」の気持ちが募り、やがて画材を買いにでかけます。 自分の記憶に残る風景を、描かずにはいられなくなったのです。 彼女のこの衝動に共感を覚えます。 「本当はこうなのよ」の気持ちって、募れば募るほど誰かに伝えたくなって、心に留めておくのが難しいですよね。 頭の中にあるイメージ。 子供の頃だったら、誰しも衝動的に、「描いてみよう!」と考えたかもしれません。しかしながら大人になると、恥ずかしい気持ちが先立ってしまって、あまり描かなくなりますね。 幸い?彼女は一人暮らし。 だからでしょうか、あまり抵抗なく、素直に描いてみることができたようです。描き終えると嬉しくて、自分が描いたほうの絵を飾って眺めたりしました。 でも恥ずかしい気持ちもあったのでしょう、それに、せっかく絵をくれた家族の思いを尊重したい気持ちもあったのです。 そこで彼女は、家族が遊びに来る日だけは絵を元に戻して、自分が描いた絵の存在は秘密にしていました。(この控えめなところが、また素敵) だけどある日、うっかりみんなにバレちゃって、「いい絵だわ!もっと描けばいいのに」と結果的には大評判になったために、心置きなく絵を描ける環境が整っていきました。 現実には、全てのウズウズした気持ちがこのような幸せをもたらしてくれるわけではないかもしれません。 でも行動に移さなければ、このような結末への可能性自体がなくなります。 いくつになっても、何かにウズウズしたら素直にトライしてみる。その魅力と大切さをこの作品は教えてくれます。 また作中では、エマおばあちゃんが描いた絵という体で、バーバラ・クーニーの絵が楽しめます。これがまた、この作品ならではの魅力。 前回ご紹介したように、ちんまりとしたお行儀のよさも健在です。 部屋の壁中、絵だらけになってなお、窓辺で描き続ける彼女を描いたシーンが、私は大好きです。 自分の30年後を想像した時、こんな風だったらいいなあと憧れずにはいられません。 とはいえ、今の私はウズウズするだけで実行に移せない日々が続いておりますが、いつか、きっと。そう思えるのは、この絵本に出会ったからかも。 何か始めたい、好きなことを大切にしたい、そんな気持ちを後押ししてくれる、希望と憧れの詰まった絵本です。 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |