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ガードナー 瑞穂 英会話講師エージェント 英会話アルテミス
アメリカ人の夫と今年で国際結婚生活11年目。2児の母。フロリダ ディズニーワールドにて勤務4年。日本へ帰国後、生まれ育った関西北摂地域で英会話講師のエージェントの仕事の傍らイラストレーターとして活動中。母として、働く女性として、アーティストとして3つの視線から書き綴る心のコラム。
いつも心に太陽を ライフスタイル 2017-09-20
meet cute 映画のような出会い
ホリデイという映画をご存知でしょうか?

クリスマスシーズンのイギリスとハリウットを舞台にした恋愛映画なのですが、その中で映画関係の仕事をやっていた老人が道に迷ってしまい、イギリスからやってきた若い女性に助けられた時に、『映画の中で起こるような素敵な出会いだね』と言うシーンがあり、その時に老人が”meet cute” という言葉を使っていました。

この英語は熟語ではなく映画界の業界用語のようですが、その映画を見て以来、その言葉がなぜだかずっと私の頭に残っていました。

そして先日、私にとって”meet cute” な出会いで新しいお友達ができました。

私がベビーカーを押しながら息子と歩いていると、「あなた頑張ってるわねぇ!みてるだけで何だが涙がでそう」と後ろから声をかけられたのが始まりです。

そこにいたのは、白髪で背筋がピンと伸び、空を飛ぶように大股でサクサクと歩き、個性的なメガネとモードファッションに身を包み、とても元気に大きな声で話す女性が笑顔で立っていました。

そこから、彼女に私達の歩くスピードに歩調を合わせてもらいながら、私の子供や家族の話、彼女の幼少時代は食糧難であった話、彼女が結婚を4回もして、二人の旦那さんを看取ったという話、

私の顔が女優になれる美人ではないけれど、顔からエネルギーが出てるから、そんな人は珍しく、とてもいいと褒められてみたり、話がいろんな方向に脱線しながら一緒に近所の静かな道をゆっくり歩きました。

別れ際に「あなたとっても頑張ってるから、私から何かご褒美をあげさせてちょうだい!今そこのスーパーで買ったダークチョコレートを一箱、はいどうぞ!」と言って手渡されました。

おかしな出会いだったなと思いながら家に帰り、リビングでもらったチョコレートを食べていると、夫と息子が帰ってきてそのチョコレートを横取りして、美味しい美味しいと食べ始めたので、「あ、それ、今さっき知らない人からもらったのよ」と言って驚かしてやりました。

「知らない人だったんだけど、もうお友達だけどね。私より40歳年上で、向かいの老人ホームに住んでいるのよ。私のこと美人じゃないけど大物になる顔だって、励まされちゃったわ」と愉快な出会いについて話しました。

今私の住んでいるマンションのバルコニーは、その大きな老人ホームの廊下側に面して建てられていて、夜でもその老人ホームの電気は決して消えることなく、24時間全ての廊下の明かりは煌々とつけられたままで眩しいほどです。

引っ越してきて以来私は、昼は洗濯物を干しながら、夜は寝室からその明かりを横になり見つめながら、いったいあの建物の中はどうなっているのだろう?とよく考えていました。

今住んでいる物件を紹介してくれた仲介会社の人が、「この老人ホームに入るだけで最低1億円要るんですって。超高級老人ホームなんですよ、いいですよね。成功者の最後の家ですよ」なんて言っていたので、どんな人が住んでいるんだろう?中に入ってみたいなと気になっていました。

一ヶ月ほど経った頃に、また同じ道でその女性と再会しました。

「チョコレートのご縁の方ね。お元気?ちょうどあなたのことを考えていたから会えたのね」とまた会話が始まり、またいろんな方向に話が脱線しながら長い立ち話をした後に、「今度私のお部屋にお茶しに遊びにいらっしゃいよ」と招待されて、次の週におしゃべりしに行きました。

ホームの中のロビーはとても広く、豪華で天井もとても高く、丸く囲まれていてまるで大きな子宮の中にいるような作りになっていて、エレベーターに乗るとレストランや大浴場の階があり、老人ホームというよりはホテルのような作りになっていました。

私のお友達の部屋には、高級な2000万円したとうステンドグラスのランプが2つ置かれ、壁一面にこれまた100年前や200年前のレアな高いお皿が飾られていて、そのお皿を一つずつ、名前や年代、作られた国や会社、塗料やディテールの繊細さ、作る工程にいかに手間がかけられているのか、値段になどについて説明してくれました。

その高級な品々はとても美しく珍しくて、まるで部屋はミュージーアムのようでありましたが、私はそれらの美に反響するように、何か物質的で空虚なもの悲しさや、彼女の孤独をずっしりと感じずにはいられませんでした。

そしてテーブルを挟んで向かい合って座って、彼女の作ったテザートとアイスコーヒーをいただきながら、いろいろなお話をしました。

その中でも特に私の心に響いた話は、「この老人ホームに入っている人たちはみんな、”早く死にたい”というのよ。その話し相手になってやるのがしんどいのよ」という話でした。

この全てが完備されている、成功者の最後の家である超高級老人ホームに住んでいる老人たちが、“早く死にたい”と願うということが私には驚きでした。

「この前なんて、その人あまりに”死にたい、死にたい”というものだから、自殺の仕方をいくつか教えてあげたのよ。なのにまだ生きているの!」と、彼女が肩を揺らせてクスクス笑い出したので二人で大笑いしました。

「こんなに恵まれた環境にいる私たちは幸せなの。いただいた寿命を前向きに、元気に笑って精一杯生ききらないといけないのよ。死にたいと文句を言いながら生きるのも、前向きに元気に楽しく笑って生きるのも、時間は同じスピードで過ぎるんだから、楽しまないともったいないのよ。

私、若い頃に死にたいと思う時があったから、自殺の仕方について色々勉強したのよ。なんせ私は勉強家だからなんでも真面目にとことん調べてしまうのよ。でも健康な体で死のうとして、失敗するほど辛いものはないということが、やってみてわかったわ」

そう言った彼女に、もっとその話を聞きたいような、これ以上聞いてはいけないような気がして、私は静かに何度もうなずきました。

彼女は最後に、「あなた、お金があっても、子供がいても、結局関係ないのよ。あなたくらいの年から、年をとって空っぽにならないように、今からちゃんと自分の好きなことに毎日水やりして育てて準備しておかないとダメなのよ。ちゃんと水やりをしてやらないと、気付いた時には無くなってしまうものなの。

子育てや仕事が生きがい。それではダメ。それはそれでもっと別の大切なものの話を私はしているのよ。あなたが好きなことを大切に守り続けなさいよ。また子育ての合間に息抜きにいらっしゃいね」と手を振って見送ってくれました。

家に戻り、バルコニーから見るその老人ホームを眺めながら、大切に守り育てねばならない私の”植物”について考えていました。

近い距離に隣接して建てられている二つの建物の中で、繰り広げられる生活は全く違うものであるけれど、今の私の生活は、彼女がかけ走った道であり、彼女の生活は、私の人生の延長線の未来に待ち構えてある問題であること。

今年で39歳の私と79歳の彼女。40歳差の二人の女性が、“meet cut”なチョコレートのご縁でお話することができたことは、『映画のような不思議な出会い』だったなと思います。

彼女の人生のお話は、私にとって途中まで読みかけた小説のように気になっているので、またお互いの息抜きのお茶会ができて、彼女の人生のお話が聞けたら良いな、と願っている今日この頃です。
ガードナー 瑞穂
アメリカ人の夫と今年で国際結婚生活11年目。2児の母。 フロリダ ディズニーワールドにて勤務4年。 日本へ帰国後、生まれ育った関西北摂地域で、英会話講師のエージェントの仕事の傍ら、 イラストレーターとして活動しています。コラムに掲載しているイラストのサイトはこちら
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豊中と箕面のカフェで習うマンツーマン英会話。お洒落なカフェレッスン。レッスンは毎回払い。
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