柔軟だけど厄介なこともあるんです |
歯にまつわることわざはたくさんありますが、今日はこんなことわざをご紹介します。 「歯は折れても舌は折れぬ」 これは「頑健なものは早く滅び、かえって柔軟なものが残る」という意味で、 「歯亡び舌存す」とも言います。 確かに世の中に出回っている商品や会社、お店などを見ても、 時代にあったニーズに合わせて変化したり、 柔軟な対応や考え方ができたりする方が長く残っているように思います。 さて、このように柔軟なものの例えにされている舌ですが、 実はお口の中では結構厄介な問題を引き起こすことがあります。 それは「舌癖」、文字通り舌の癖です。 実は舌には正しい位置というのがあります。 上の前歯裏側の付け根の少し内側部分に舌の先があたって、 上あごに舌全体がピタッとくっついているのがその正しい位置なのです。 ところが、舌の位置が正常よりも低い位置にあったり、 必要以上に舌を歯に押しつける癖があったり、 舌を上下の前歯の間に突き出す癖があったりすると、 その力は歯をも動かし、歯並びやかみ合わせを悪くする原因にもなるのです。 ちなみに話している時に舌がぺろぺろ見えたり、 舌ったらずな話し方をしたりするのは、舌癖がある人の特徴です。 このような舌の癖があると、 矯正歯科治療をしてもなかなか思うように歯が動かなかったり、 またせっかくきれいな歯並びやかみ合わせになっても後戻りしたりしますし、 矯正歯科治療以外でも歯周病などの病気をひどくする要因になったりもするので、 この癖は早めに治す必要があります。 舌は大きな筋肉の塊で、通常であれば日常生活の中で鍛えられて 正しい舌の位置を維持できるような筋力が養われるのですが、 現代の食生活の変化やアレルギー性鼻炎などの鼻疾患により 正しい呼吸ができない子どもの増加など、 十分な筋力が獲得されないまま成長している人が多いのです。 また舌だけでなく、口唇や口の周りの筋肉にも同じように十分な筋力がない人、 またそれらの筋肉の使い方が上手でない人も多くいます。 このような場合、舌や口の周りの筋肉を鍛える訓練(筋機能療法、MFT)を行います。 腹筋や背筋、四肢の筋肉を鍛えるのと同様、地道で根気のいる訓練ですが、 舌や口の周りの筋肉がついて、またうまく使えるようになっただけで 歯並びが変わることもあるほど、とても有効な訓練なんです。 厄介なのが、頬づえや貧乏ゆすりのような癖は目につきやすく、 人にも指摘されることで直しやすいですが、舌の癖はお口の中でのことですし、 舌の動きはほとんど無意識なので、本人も気づきにくく、直しにくいという点です。 ただ、健康にも大きな影響を与えるこの舌癖。 舌の位置や癖についてこの機会に一度気にしてみてはいかがでしょうか? |
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