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地球のことをおしえてあげる(ソフィー ブラッコール)

いつ宇宙人に遭遇しても大丈夫

地球のことをおしえてあげる
ソフィー・ブラッコール(作)
横山和江(訳)
私のダンナさんは、主にCATV向けの番組を作る仕事をしておりまして、彼は新しく担当する番組が決まると、仕事柄、にわかに同じジャンルの映像をチェックし始めます。動物園の番組担当になったら、野生動物を紹介する番組、といった具合に。

先日のこと。私が外出から帰宅すると、テレビに古い映像が映っていました。アメリカ人のおじさんが、緊迫した様子で何かの体験談を語っている。ん?一体これは、何の映像…? と私が訝しんだとき、画面の中のおじさんが言いました。「UFOがまた家の上空に現れたんです!!」

聞けば、懐かしいのを見つけただけだと(笑)。生粋の“昭和のテレビっ子”が懐かしむ、40年近く前の某人気UFO特番の映像でした。

今回ご紹介する絵本は、手元にあれば、いつ地球上で宇宙人に遭遇したとしても大丈夫(?)、誰でも説明上手なガイドさんになれる頼もしい一冊です。

「宇宙からくる、だれかさんへ。地球がどんなところかしってる?ぼくがきみに、おしえてあげる。」という書き出しで始まります。

思えば私たちは、日本に暮らしている感覚は常日頃からあっても、地球に暮らしている感覚を意識することは、なかなかありません。

でも作者は、私たちよりもうんと、地球に暮らしている感覚を持っているご様子。これには、半分をニューヨークで暮らして、もう半分は様々な国を訪ねまわって活動するという、作者のライフスタイルも影響しているようです。

その生き方は、この作品のコンセプトだけでなく、作品が持つ色遣いにも表れているなあと感じます。

地域と色彩は密接に関係しています。身に纏うもの、食べるもの、使うもの、街の風景や、環境に適応して生きている動植物の姿。それらには固有の色や配色が伴っていて、その地域らしさを醸し出します。

滞在した地域ごとに根付いている美しい色彩に親しむ。その経験が増えるたび、作者の中で絶妙に混ざり合って、熟成されて、漸く生まれた色遣いのように思われます。だって、その調和のとれた美しさったら。画面の隅々まで細やかに発揮されていて、眺めるうち、ついページをめくる手が止まってしまうほど。

個人的には、50年近くも地球で暮らしながら、見ているようで見ていない、地球本来の姿をみせられた気がしました。自分の中にあった多様性という言葉の意味を、頭ではなく心での理解、温度を伴った知識へと変えてくれたように思うから。

地球の外からやってくる誰かに宛てた手紙風の文章は、最後、「地球にいつきてくれる?」の問いかけで終わります。

催促めいた大胆発言に、某UFO特番に親しんだ“昭和のテレビっ子”の嫁は、ひたすら慄くばかりです(笑)
地球のことをおしえてあげる
ソフィー・ブラッコール(作)
横山和江(訳)
すずき出版
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/