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Du Iz Tak? by Carson Ellis

小さな世界が広がる虫語の絵本

Du Iz Tak?
by Carson Ellis
今回は、英語ではなく、虫語の絵本です。虫のことばは、作者の創作ですが、なんとなく意味がわかるのが楽しい。

タイトルの “Du Iz Tak?” が、”What is that?” なのは、すぐに分かると思います。

ある日芽をだした、見慣れない植物。3匹の虫たちが、なんだろうと不思議がっているうちに、どんどん成長して大きくなっていきます。

舞台の場所は固定されていて、左のページに倒木の丸太、右のページに不思議な植物が描かれ、季節を通じて、景色が変化していきます。

どんどん大きくなる植物に登ろうと、虫たちは、丸太に住むダンゴムシの Icky にはしごを借ります。

いろんなものを持ち込み、どんぐりを頭にした要塞や、ツリーハウスをつくって、それぞれにくつろぐ虫たち。

その様子を、こっそりクモが観察していて、大ピンチになったりもします。

植物はさらに大きくなり、色鮮やかな花が咲いたときには、大騒ぎになります。隠れていた生き物たちも、みんな顔を出して、花だ、花だ、なんてきれいな花なんだろうと、うっとり幸せそう。

やがて、冬が近づくと、虫たちが厚着になっているのも可愛らしい。花も枯れてきて、みんな冬支度に入ります。

夜には、コウロギがやってきて、月明かりの中でバイオリンを奏でます。おじさんみたいなユーモラスな顔の毛虫が、サナギからきれいな(でも少し面影がある)蝶に変身して、バイオリンに合わせて飛びまわるシーンも詩的です。

ページのあちこちで、時間とともに、植物や生き物たちの変化があって、一度読んだだけでは全部は見きれません。

虫語も、同じ言葉を探して、どんな場面で使われているかを見ると、意味がわかるようになっていて、何度も行ったり来たりしながら発見を楽しめます。

イラストは主にガッシュとペンで描かれていて、手書きがメインのためか、温かみがあります。

“Du Iz Tak?” は、2017年に、コールデコット・オナーに選ばれ、2018年には、ショートアニメーションも制作されました。

アニメーションは、Youtubeで見ることができます。虫たちが動く様子がユーモラスで、また音楽も素晴らしく、アニメーションにもぴったりの作品です。

わたしは、虫はあまり得意ではありませんが、この虫語の絵本は、とても新鮮で、よくできていて、虫の小さな世界に入り込んだような、楽しい気分になれました。
Du Iz Tak?
by Carson Ellis
Publisher: Walker Books
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
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