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ちいさなもみのき(マーガレット・ワイズ・ブラウン)

静かにお楽しみ頂くのがおすすめ

ちいさなもみのき
マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)/バーバラ・クーニー(絵)
今年も残りわずかとなりましたね、早いなあ。

記事の公開日がクリスマスイブということで、皆さん、すでにどこかのタイミングで、何かしらのイベントを楽しみ終えていらっしゃる頃でしょうか。

私の場合は、絵本作家のRokoちゃんが「ホームパーティーをするから来ない?」と、早々に誘ってくれていたのですが、今年は恐ろしく仕事のスケジュールが遅れてしまっているため、泣く泣く参加を断念。

…という状況の中、少しでもクリスマス気分を味わうべく、手にした絵本が今回ご紹介する作品です。

これ!と思ったのは、文も絵も大好きな作家であることはもちろんなのですが、もしかしたら、部屋に引きこもって作業せざるを得ない自分と、作中に出てくる男の子を、心のどこかでちょっぴり重ねていたせいかもしれません。

その男の子は足を悪くしていて、自分の部屋から出られない状況にありました。息子を励まそうと、その父親が森で小さなもみの木を見つけ、自宅へ連れて帰ります。

このことは、男の子の願いでもありました。父親は、春になれば元いた場所へ帰すことを約束しながら「私の息子と一緒に大きくなっておくれ。あの子が元気になるように、力になっておくれ」と、もみの木に言いました。

実は、物語の主人公は、この小さなもみの木のほうです。種から芽吹いて以来7度目の冬でしたが、他の木々から少し離れたところで芽吹いてしまったことを、寂しく思っていたところでした。

男の子の部屋に連れてこられたもみの木は、大きな樽に植えられて、装飾されて、クリスマスツリーとして冬を越すこととなりました。

なんだか今年は、70年近く前の作品を多くご紹介してしまっているように思いますが、これも1954年のものです。

赤と緑のクリスマスカラーに、黒。そこへもう1色加えられた、青みがかったグレーが印象的です。それらの色を重ねて作られたいくつかの色は、所々に散りばめられていて、アクセントになっています。 また、白抜きで表現された雪や雲や星々などの演出も素敵です。

冬が来たら、男の子のいる暖かい部屋で一緒に過ごす。 男の子や、その友人とおぼしき子供たちと、この小さなもみの木との関係は、翌年も続きましたが、3年目、物語のラストは少し様子が違うようです。

もちろん、心がポカポカになる結末が用意されていますよ。

お一人の時間、温かいコーヒーでも淹れて、静かにお楽しみ頂くのが個人的にはおすすめです。

今年はクリスマスどころじゃなかったなあ、という皆さんも、存分にクリスマスムードで盛り上がれた皆さんも。 2022年をめいっぱい頑張ってこられて、今日を迎えておられることと思います。皆さま、本当にお疲れ様でした!

今年もお読み下さってありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願いいたします。
ちいさなもみのき
マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)/バーバラ・クーニー(絵)
かみじょう ゆみこ(訳)
福音館書店
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
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定休日:月曜・火曜+不定休
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