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The Man Who Walked Between the Towers by Mordicai Gerstein

史上最も美しい犯罪

The Man Who Walked Between the Towers
by Mordicai Gerstein
1974年8月7日、フランス人の曲芸師、フィリップ・プティは、ニューヨークのワールド・トレードセンターのツイン・タワーの間にワイヤーを張って、綱渡りをしました。

約1時間もの間、行ったりきたり、ダンスをしたり、綱の上に寝そべることすらしました。

この、史上最も美しい犯罪として語り継がれている実話を元にした絵本をご紹介します。

2004年にコルデコット賞を受賞していて、表紙の特徴的なイラストが印象に残っていましたが、なんとなく手に取っていませんでした。

先日、これが実話で、それもワールド・トレードセンターが舞台と知り、そんなことを命懸けでしたおかしな人がいるんだ、とびっくり。

2008年に、“Man on Wire” というドキュメンタリー映画も制作されていて、これを見て、数年がかりで綿密に計画が練られていたことが分かりました。

ケイパー映画のように、計画時も当日もハプニングの連続。絶対成功しないと、グループから脱退するメンバーも続きます。当日は、何度も警備員に見つかりそうになり、成功したのが分かっているのに、ハラハラしました。

ノートルダム大聖堂でも無許可で綱渡りをしたプティ。ワールドトレードセンターのツインタワーを見て、どうしても綱渡りをしなければ、と思います。

まだ完成しきっていなかったビルに、作業員に化けて潜り込み、協力者の友人たちと、夜中にワイヤーを張って準備をします。

40mも離れたビルの間にワイヤーを張るのに、弓矢を使うというのもアーティスティック。

絵本のイラストは、ペンとインク、油彩の絵の具で美しく描かれています。綱渡りのシーンは、見開き3ページ分に広がる仕掛けで、臨場感があり、お尻がぞわぞわします。

ワールドトレードセンターには、20年以上前に訪れたことがあり、最上階のレストラン Windows on the World で夜景を見ながら食事をした思い出があります。下からビルを見上げた時は、高すぎて気持ちが悪くなりました。

今はなくなってしまったビルですが、同じビルを見て、何がなんでも綱渡りをするのだと思う人がいるのは、馬鹿馬鹿しいを通り越して、芸術的で、感動します。

プティは、逮捕歴が500回以上。この時も逮捕され、子どもたちにパフォーマンスを見せるという約束で釈放されました。

74歳の今も存命です。今年はワールドトレードセンターでの綱渡りから50周年で、マンハッタンの聖ヨハネ大聖堂で綱渡りの再現を披露しました。超人ですね。
The Man Who Walked Between the Towers
by Mordicai Gerstein
Publisher: Roaring Brook Press
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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