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さあ、しゃしんを とりますよ(ナンシー・ウィラード)

二人には気の毒だけど…笑っちゃう

さあ、しゃしんを とりますよ
ナンシー・ウィラード(文)
トミー・デ・パオラ(絵)
急な話で、先月末のこと、NHKさんの「ウィークエンド関西」という番組の取材を受けました。少しの時間でしたが、お店の活動のいくつかを取り上げて頂きました。

せっかくの機会!というと、つい意気込んで、あれもこれ盛りだくさんにしたくなっちゃうのが人情だよね…!というテーマをユーモラスに扱っているのが、今回ご紹介する作品です。

町のはずれもはずれ、と表現するくらいの場所に暮らす、靴屋の夫婦。結婚記念日に写真を撮ることにしました。まだカメラはうんと大きくて、写真を撮るのが特別なイベントだった頃のお話。旦那さんは、写真屋さんを呼んできました。

「どこでとりましょうか?」と写真屋さん。
「家のまえ。」と旦那さん。
「うらの畑。」とおかみさん。
「じゃあ、畑からカボチャを持ってきて、家のまえでとれば?」写真屋さんの助手が出した折衷案に二人がのっかります。

だったら、ニンジンも…とおかみさん。
「しゃしんは、ありのままが いいんですよ」と写真屋さん。そう言いつつ「奥さん、お着替えなさいますよね?」

と、こんな調子で帽子に靴、趣味の楽器や描いた絵やら、「せっかく記念写真を撮るのだから」と、あれもこれもどんどん増えていきます。

ようやく出揃って、いざ撮影となると。夫婦は緊張のあまり手が震え、固い表情のまま、にっこり笑うことができません。 果たしてこの記念撮影は、うまくいくんでしょうか?

二人には気の毒だけど…笑っちゃう、まさかのオチが最後に待っています。

夫婦はいたって真面目に、よりよくしようと一生懸命。何度も「しゃしんは、ありのままがいいんですよ」と口にしながらも、二人の行為を受け入れる写真屋さんの、なんとおおらかなこと。そして、何とか知恵をめぐらせて円満に撮影を乗り切ろうとする、助手の振る舞いの微笑ましいこと。

トミー・デ・パオラが描く、それぞれの人柄がにじみ出た、愛嬌たっぷりのキャラクターが、このお話にぴったんこなんです。

さて、この作品。
何もないうちは「アホやなあ(笑)」とニヤニヤしながら読んでたんですけどね。

今まで着物でお店番なんてしたことがないのに「今年はそれが目標だから!」と意気込んで着物を着て、取材に臨んで。放送前日にはSNSで告知もして。 いざ、放送となったらですよ?急に何もかも恥ずかしくなってきて…

リアルタイムで視聴するとか!到底無理やったんですよ。恥ずかしさを受け入れるのに、どんだけ時間かかったか…。しかも番組を見た友人からは「あれじゃあ、いつも着物でお店番してる人みたいだったよ?」「あれを維持できるのか?」といった心配の声も。

あああ…なんてこった。
アホやなあ、私(涙)
さあ、しゃしんを とりますよ
ナンシー・ウィラード(文)
トミー・デ・パオラ(絵)
福本友美子(訳)
光村教育図書
profile
恒松 明美
『RiRE~リール』店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ピクチャーブックギャラリー
『RiRE~リール』

大阪府堺市中区深井水池町3125
定休日/月曜・火曜+不定休
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