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Under the Same Sky by Britta Teckentrup

言葉や文化が違っても、同じ絵本で通じ合うことができる

Under the Same Sky
by Britta Teckentrup
表紙は、雲の形に切り取られた中にタイトルがあり、かわいらしいキツネの親子が空を見上げています。

最初に登場するのは、屋根の上の猫たち。
We live under the same sky…
…in Lands near and far.
ページをめくると、遠い国のライオンの家族があらわれ、雲の形に切り取られたところから、We live under the same sky… の文章がのぞいていて、みんな同じそらのしたで暮らしているのが、素敵に表現されています。

切り抜きの形は、恋人たちのページでは、ハートになり、嵐の中で雨にうたれる動物たちのページでは、水滴になります。

とてもシンプルな詩の絵本ですが、世界中の生き物が、みんなが同じ空のしたで暮らしているのだ、ということを、再認識させてくれます。

イラストは、手書きや、いろいろな手法を使って描かれたもののコラージュが、コンピューターで重ね合わせて加工されていて、複雑な色合いがとても美しく、動物たちの表情はかわいらしい。

ブリッタ・テッケントラップは、ドイツ人の絵本作家で、ロンドンで長く暮らしていました。100冊以上の絵本を描き、25カ国語以上に翻訳されている人気作家です。日本でも、『いのちの木』など、たくさんの絵本が翻訳されています。”Under the Same Sky” は、2018年のケイト・グリーナウェイ賞のショートリストに選ばれました。

2015年以降、多くの難民が地中海を渡って欧州に逃れようとし、何万人もの人々が溺死したり、強制送還されたりしました。各国で論争がおこりましたが、ブリッタは、あるラジオ番組で、難民の受入れにまったく理解を示さない人の発言にインスピレーションを得て、この絵本を思いつきました。

人は、何かにつけて、区別をします。性別、肌の色、出身地… 宇宙から見ると、みな地球人で、同じ空のしたで暮らしているんですね。言葉や文化が違っても、同じ絵本で通じ合うこともできます。

子ども向けのベッドタイムストーリーとしても、大人が眺めるのにも素敵な絵本です。
Under the Same Sky
by Britta Teckentrup
Caterpillar Books Ltd (2018)
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
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