6カ国転校生ナージャの発見(キリーロバ・ナージャ)
生き方のヒントももらえる本
6カ国転校生 ナージャの発見
キリーロバ・ナージャ(著)
キリーロバ・ナージャ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、キリーロバ・ナージャさんの『6カ国転校生ナージャの発見』
ソ連(当時)生まれのナージャさんはご両親の仕事の都合で、ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダに引っ越し、その都度地元の学校で教育を受けました。小学校中学校時代を6つの国で4つの言語により教育を受けたというわけです。
ある日いきなり、全く話せない、聞き取れない言語で授業を受けるなんて、想像を絶します。
しかもそれが一度や二度じゃないなんて。
子どもは柔軟なのでしょうか、それともナージャさんが特に能力が高かったのか、その両方なのか、とにかくナージャさんはめげずになじみ、成績を上げていきました。
そして一言で「学校」と言っても国によって様々な違いがあることを発見し、それを項目ごとに比較してまとめたのがこの本というわけです。
例えば、学年について。
ナージャさんが最初に入学したのは当然ですがロシアの小学校。
ロシアでは、小学校への入学年齢に幅があるんですって。標準は7歳だけど、6歳で入学するクラスもあれば、5歳で入学したり、8歳で入学する子も。早く入学できる子はそれだけ能力が高いことになり、ちょっとした自慢になります。
ナージャさんは日本の学校に転校した時、クラスメートに「あなたは何歳から学校に行っているの?私は6歳から」と言って、みんなにポカーンとされたそうです。日本は6歳で入学すると決まっているし、飛び級などもありません。日本は個人の能力によってではなく、年齢で決めるわけです。
また、ナージャさんが日本に来てぶつかった壁は「数字の書き方」。
算数のテストでロシアで書いていたように、7の斜めの部分に斜線を入れたり、4の上の部分を離して書くと、減点されたそうです。数字の形がおかしい、と。
日本が形にこだわるのは数字や文字だけではありません。
ロシアでは水泳の授業はとにかくスピード重視。早く泳げることが第一なので、ナージャさんもとにかく早く泳げるようになっていました。ところが日本の水泳の授業では、早さよりフォームが大事とされ、せっかく早く泳げているのにビート板を持って基礎からやり直すことになったのだとか。
こう書いていくと、ナージャさんが日本の学校って杓子定規で本質をついていない、と批判しているように感じるかもしれませんがそうではありません。ナージャさんはどの国の学校に転校しても直面する「違い」について、この国では何に重点を置いてこういう授業をしているのだろうと考え、良い点を見出そうとしています。
日本では、このように型を重視したり、細かい決まりを守ることで、みんなが団結して力を出せるようになっているのだなと理解するのです。根っからのポジティブ人間なのかもしれません。
ではナージャさんが挙げておられる6カ国の学校のそれぞれの良い点を紹介しましょう。
イギリスの学校は、グループで考えたり作業をすることが多く、苦手な科目があっても大丈夫と感じられるところ。
フランスでは、フランス語が喋れない子どもが集められるクラスというのがあるそうで、おかげで自分がアウトサイダーだと感じない点が良かったとおっしゃっています。
日本では、授業だけではなく給食当番や委員などみんなで取り組むことが多く、人につられて苦手なものが得意になったりすること、つまり発見のチャンスがあるとのこと。
アメリカの学校では、どんなことをしていてもとにかく褒められるのだけど、ナージャさんはそれに調子に乗るのではなく「自分はいつもいつも褒められるより、ものすごく頑張って上手く行った時に褒められたい人なんだ」と自分を知ることができたそうですよ。
こんなふうに、いろいろな国の言葉でいろいろなタイプの授業を受けたナージャさんは、一つの結論を導きます。
それは「苦手なことを無理して克服しようとするより、得意なことを頑張って伸ばしたほうがいい」ということ。
ナージャさんは転校すると、言葉の理解からスタートしないといけません。
言葉の壁もあるのに、まず苦手なことからやっていこうとすると、みんなに追いつくどころか、どんどん差が開いてしまうことになるから。それだったら、得意なことをうんと頑張って、そのうち言葉がわかるようになったら、苦手だった分野に取り組むほうが効率が良いことに気がついたのですって。
これは転校生に限らず、参考になるお話かもしれません。
授業で使うノートが違う、体育の授業の時の並び方が違う(並ばない国もある)、教室の机の並び方も違う……6カ国の学校で違う点はいっぱいありましたが、何より違ったのは「普通」の概念だったとナージャさんは最後に語っています。
「ここではこれが普通よ」と言われる、その普通の基準が国によって全然違うんですって。
ナージャさんはこの問題をどう解決したか?
周囲の「普通」に惑わされず、自分の軸(自分の中の「普通」)を行動基準にする、そうすればどこに行っても迷わない、そう決めたそうです。
「6カ国転校生ナージャの発見」は、単に国ごとの学校を比べるだけではない、生き方のヒントももらえる本でした。
今回ご紹介するのは、キリーロバ・ナージャさんの『6カ国転校生ナージャの発見』
ソ連(当時)生まれのナージャさんはご両親の仕事の都合で、ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダに引っ越し、その都度地元の学校で教育を受けました。小学校中学校時代を6つの国で4つの言語により教育を受けたというわけです。
ある日いきなり、全く話せない、聞き取れない言語で授業を受けるなんて、想像を絶します。
しかもそれが一度や二度じゃないなんて。
子どもは柔軟なのでしょうか、それともナージャさんが特に能力が高かったのか、その両方なのか、とにかくナージャさんはめげずになじみ、成績を上げていきました。
そして一言で「学校」と言っても国によって様々な違いがあることを発見し、それを項目ごとに比較してまとめたのがこの本というわけです。
例えば、学年について。
ナージャさんが最初に入学したのは当然ですがロシアの小学校。
ロシアでは、小学校への入学年齢に幅があるんですって。標準は7歳だけど、6歳で入学するクラスもあれば、5歳で入学したり、8歳で入学する子も。早く入学できる子はそれだけ能力が高いことになり、ちょっとした自慢になります。
ナージャさんは日本の学校に転校した時、クラスメートに「あなたは何歳から学校に行っているの?私は6歳から」と言って、みんなにポカーンとされたそうです。日本は6歳で入学すると決まっているし、飛び級などもありません。日本は個人の能力によってではなく、年齢で決めるわけです。
また、ナージャさんが日本に来てぶつかった壁は「数字の書き方」。
算数のテストでロシアで書いていたように、7の斜めの部分に斜線を入れたり、4の上の部分を離して書くと、減点されたそうです。数字の形がおかしい、と。
日本が形にこだわるのは数字や文字だけではありません。
ロシアでは水泳の授業はとにかくスピード重視。早く泳げることが第一なので、ナージャさんもとにかく早く泳げるようになっていました。ところが日本の水泳の授業では、早さよりフォームが大事とされ、せっかく早く泳げているのにビート板を持って基礎からやり直すことになったのだとか。
こう書いていくと、ナージャさんが日本の学校って杓子定規で本質をついていない、と批判しているように感じるかもしれませんがそうではありません。ナージャさんはどの国の学校に転校しても直面する「違い」について、この国では何に重点を置いてこういう授業をしているのだろうと考え、良い点を見出そうとしています。
日本では、このように型を重視したり、細かい決まりを守ることで、みんなが団結して力を出せるようになっているのだなと理解するのです。根っからのポジティブ人間なのかもしれません。
ではナージャさんが挙げておられる6カ国の学校のそれぞれの良い点を紹介しましょう。
イギリスの学校は、グループで考えたり作業をすることが多く、苦手な科目があっても大丈夫と感じられるところ。
フランスでは、フランス語が喋れない子どもが集められるクラスというのがあるそうで、おかげで自分がアウトサイダーだと感じない点が良かったとおっしゃっています。
日本では、授業だけではなく給食当番や委員などみんなで取り組むことが多く、人につられて苦手なものが得意になったりすること、つまり発見のチャンスがあるとのこと。
アメリカの学校では、どんなことをしていてもとにかく褒められるのだけど、ナージャさんはそれに調子に乗るのではなく「自分はいつもいつも褒められるより、ものすごく頑張って上手く行った時に褒められたい人なんだ」と自分を知ることができたそうですよ。
こんなふうに、いろいろな国の言葉でいろいろなタイプの授業を受けたナージャさんは、一つの結論を導きます。
それは「苦手なことを無理して克服しようとするより、得意なことを頑張って伸ばしたほうがいい」ということ。
ナージャさんは転校すると、言葉の理解からスタートしないといけません。
言葉の壁もあるのに、まず苦手なことからやっていこうとすると、みんなに追いつくどころか、どんどん差が開いてしまうことになるから。それだったら、得意なことをうんと頑張って、そのうち言葉がわかるようになったら、苦手だった分野に取り組むほうが効率が良いことに気がついたのですって。
これは転校生に限らず、参考になるお話かもしれません。
授業で使うノートが違う、体育の授業の時の並び方が違う(並ばない国もある)、教室の机の並び方も違う……6カ国の学校で違う点はいっぱいありましたが、何より違ったのは「普通」の概念だったとナージャさんは最後に語っています。
「ここではこれが普通よ」と言われる、その普通の基準が国によって全然違うんですって。
ナージャさんはこの問題をどう解決したか?
周囲の「普通」に惑わされず、自分の軸(自分の中の「普通」)を行動基準にする、そうすればどこに行っても迷わない、そう決めたそうです。
「6カ国転校生ナージャの発見」は、単に国ごとの学校を比べるだけではない、生き方のヒントももらえる本でした。
【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】
この記事とはちょっと違うことをお話ししています。
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6カ国転校生 ナージャの発見
キリーロバ・ナージャ(著)
集英社インターナショナル
6つの国4つの言葉で学ぶとどうなるか?ソ連(当時)に生まれ、両親の転勤で世界6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の地元校で教育を受けた著者ナージャが、それぞれの国での体験&発見を紹介。机の並べ方、筆記用具、テスト、ランチ…世界の教室はこんなに違った!正解はない、違いがあるだけ。「ふつう」がひっくり返り、世界の見え方が変わる本です。 出典:楽天
キリーロバ・ナージャ(著)
集英社インターナショナル
6つの国4つの言葉で学ぶとどうなるか?ソ連(当時)に生まれ、両親の転勤で世界6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の地元校で教育を受けた著者ナージャが、それぞれの国での体験&発見を紹介。机の並べ方、筆記用具、テスト、ランチ…世界の教室はこんなに違った!正解はない、違いがあるだけ。「ふつう」がひっくり返り、世界の見え方が変わる本です。 出典:楽天
池田 千波留
パーソナリティ・ライター
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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