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雨ニモマケズ(宮沢賢治)

その世界を感じさえすればいい

雨ニモマケズ
文:宮沢賢治/絵 :松成真理子
最近、ちょっと外出するとなれば雨、といった具合で、雨女化が著しいのが悩みです。

そんなどうでもいい理由からのチョイスなのか?とつっこまれそうですが、はい、そうなんです。あんまり出かけるたびに雨が降るので、うんざりしてたら、何気にこの作品が目についたのです。

さて、詩を扱った絵本は色々あります。ましてや、賢治の有名過ぎるこの詩で絵本を作ろうというのは、その出版に携わる方々にとって、なかなかに大きなチャレンジなんだろうなあと思います。

いくつかあるようですが、今回この場でおすすめするのは、あすなろ書房さんから出版されているものです。松成真理子さんの絵はもちろんのこと、気軽に手にとれる小ぶりなサイズも素敵です。

各見開きの絵の構成は、いたって素直なものがほとんどです。のびやかな雰囲気とともに、詩にある言葉通りのイメージが描かれています。

そもそもの話なのですが、絵本作りの基本的なセオリーでは、言葉と絵が被ることをよしとしません。絵で伝えるべきもの、言葉で伝えるべきもの、きちんと整理した表現を駆使して、より高い効果を狙う。

創作絵本の教室でも、そうやってできうる限りイメージを広げる工夫をしましょう、と教わるのが一般的です。

その観点に立てば、「言葉のままの絵なんて…つまらないんじゃないの?」と思われるかもしれません。だけど、もしかしたらこの絵本のチャレンジは、そこにこそあったのかな?と、私は想像します。

言葉を目で追う。多数の人が素直に、直感的に抱くであろう情景が見開きには広がっている。考える必要はなくて、ただこの詩の世界に心を委ねて、その世界を感じさえすればいいんだなって思わせてくれる。松成真理子さんの絵が、そうさせてくれる。

はたして私たちの日常において、考えることから解放されるための機会を、どのくらい持てているでしょうか。

考えて導き出した答えより、心が感じることで得られる答えのほうが、きっと幸せな選択のはずだと、どこかで気づきつつ。

なんて思いながら、この絵本を読み直した何日か後のことです。

晴れた日の夕方、飼っている柴犬の散歩に出かけたところ、折り返し地点で突然スコールみたいな大雨に見舞われてですね、夫婦(と一匹)、全身ずぶ濡れになるという経験をしました。

ええ年したおじさんとおばさんが、大粒&大量の雨に打たれまくって、あまりのことに口もきけず、全身ボトボトになりながら、トボトボ帰る散歩道…(泣)

身も蓋もないオチですが、経験に勝るものなし。

「雨に負けない」って、思いのほか強靭なメンタルが必要。 尊い理想が込められた詩であると、改めて感じ入った次第なのでした(トホホ)
雨ニモマケズ
文:宮沢賢治/絵 :松成真理子
あすなろ書房
profile
恒松 明美
『RiRE~リール』店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ピクチャーブックギャラリー
『RiRE~リール』

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