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Le Baron Bleu by Gilles Baum

物語、言葉の力について考えさせられる絵本

Le Baron Bleu
by Gilles Baum Illustrated by Thierry Dedieu
これは、100年ほど前のお話です。その頃の戦争は、大量破壊兵器もなく、コンピューターもなく、人が直接手を動かしていました。

そらいろ男爵は、自家用機を空色に塗って、バードウォッチングをして、のんびり暮していました。戦争が始まり、男爵も、飛行機を迷彩色に塗り替えて、参加せざるを得なくなりました。

男爵は、大の読書家。天井まで届く大きな本棚から分厚い12巻の百科事典を取り出して砲弾にし、橋を敵から守る活躍をしました。

しかし、戦争は続きます。分厚い小説「戦争と平和」を砲弾にしたところ、敵にはあたりませんでしたが、隊長が読み耽ってしまったために、戦争が一時止まりました。

この勝利に気をよくして、男爵はおもしろい本を投下し続けます。冒険談、料理の本、思想の本、歴史物語、天文学、詩集…敵も味方も夢中になって読みました。そして戦争をやめさせるために男爵が最後に落としたのは……


男爵は、最初は重い本を砲弾の代わりにしましたが、本は、その重さではなく、中身によって威力を発揮することに気付きます。物語、言葉の力について考えさせられる絵本です。

フランスの絵本ですが、『そらいろ男爵』として日本語にも訳されています。第1次大戦開始100年を記念して、2014年に出版され、フランスで児童書に贈られるサンテグジュペリ賞を受賞しました。

著者のジル・ボムは、小学校の先生でもあり、そこで絵本作家のティエリー・デデューと出会いました。この絵本の他にも2人の合作があります。

イラストは、マンガ風で、コミカルに描かれています。背景も雲と鉄条網以外にはほとんどなく、シンプルです。ページをめくると、アニメーションを見ているように感じられます。


香港、ミャンマー、アフガニスタン、スーダンなど、世界的に不穏な情勢が続いています。人類は、武力で権力を握ったり、戦争をしたりすることを、永久にやめられないのでしょうか。

短い人生で、そんなことに時間と労力とお金を費やすのは馬鹿馬鹿しい、と思う人の割合が増えればやめられるのかな。


この絵本は、まじめなテーマを扱っていますが、いたってユーモラスに描かれています。最後のシーンで、男爵が勲章をもらい、皆が敬礼をしているなか、飼い猫3匹は、飛行機の上で脱力状態でくつろいでいて、キュートです。

大人にも読んでもらいたいですが、子どもたちにも読んで欲しいです。次の世代は、平和を守ることについて考えられる人の割合が増えますように。
Le Baron Bleu
by Gilles Baum Illustrated by Thierry Dedieu
Publisher: Seuil Jeunesse
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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