Brer Rabbit Retold by Arthur Flowers
奴隷のストーリーテラーたちが語り継いだ物語
Brer Rabbit Retold
by Arthur Flowers, illustrated by Jagdish Chitara
by Arthur Flowers, illustrated by Jagdish Chitara
“Brer Rabbit Retold” は、アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人たちが語り継いだ物語を再話したものです。
「ブレア」は、「ブラザー」の訛り。「ブレア・ラビット」は、「うさぎどん」とも訳されています。
利口でいたずら好きなブレア・ラビットが、キツネやオオカミをやり込めます。
このお話は、もともと、ジョージアのプランテーションで、奴隷のストーリーテラーたちが語っていたもの。
アトランタのジャーナリストであったジョーエル・チャンドラー・ハリスは、自身も大農園主の元で住み込みの印刷工兼見習記者として働いていた経験があり、黒人たちとの交流から、これらのお話を『リーマスじいやの物語』としてまとめました。
このシリーズは大変な人気となり、「アメリカのイソップ」として世界に広く知られています。
リーマスじいやは、奉公先の白人の男の子に毎晩お話を語って聞かせます。
男の子にお話をせがまれるリーマスじいやは楽しげで、著者は意図しなかったかもしれませんが、奴隷制が良いものであったかのような印象を与えます。
一方で、この本が存在しなければ、ブレア・ラビットのお話は現在まで残らなかったかもしれません。
“Brer Rabbit Retold” の著者、アーサー・フラワーズは、アメリカのデルタ地区出身のアフリカ系アメリカ人作家で、吟遊詩人でもあります。
子どもの頃から、ブレア・ラビットの話を聞いて育ち、ずっと自分の手でこれを書き直したいと考えていました。
『リーマスじいやの物語』では、口承民話の一部が省かれています。本来のお話の精神性を取り戻したい思いがありました。
インドのチェンナイを拠点とする出版社タラブックスは、アーサー・フラワーズと The Brer Rabbit Retold Project を立ち上げました。
イラストを手掛けたのは、西インドに伝わる礼拝用の布、マタニパチュディの作家ジャグディーシュ・チータラーです。
ハンドメイドの絵本で、糸で綴じられています。表紙は布。印刷はシルクスクリーンで、とてもゴージャスです。
さらに、フラワーズがインドの若いミュージシャンたちの演奏に合わせて物語を朗読した音源が、CDで付属しています。
リズミカルで、躍動感があり、素晴らしい語りです。昔の人たちは、こんな風に歌って語り継いでいたのでしょうか。
アーサー・フラワーズは、省かれていたお話を付け加えるだけでなく、新しいものも追加しました。
ブレア・ラビットが宇宙船で寝過ごしてしまって、そのまま宇宙に行くお話。とっても楽しくて、私はこのお話が大好きです。
また、ゾーラ・ニールハーストンが語ったという John the Conqueror の伝説も登場します。
ムチで打たれそうになった、赤ちゃんを背負った女性が空に舞い上がり、周囲の奴隷たちも次々に舞い上がり、そのまま祖国に戻ったというお話。
ブレア・ラビットは置いてけぼりになりますが、Conqueror に残った人々を助けるように諭されます。
Conqueror は hoodoo 、アフリカ系アメリカ人の民話に登場する精霊です。
神話好きなので、ゾーラ・ニールハーストンの本にも興味が湧きました。
以前、ある翻訳家の方の講演会で、「日本では、黒人奴隷の言葉を東北の方言で訳す習慣があって、黒人の方にも東北の方にも失礼だ」という話を聞いたことがあります。
それはその通りで、まったく気づかずにいたことが衝撃的でした。
無意識で他人を貶めるようなことをできるだけ避けるためにも、「知る」ことを大事にしていきたいと思っています。
お話を通して、いろいろな人々の思いを知ることができたら素敵ですね。
「ブレア」は、「ブラザー」の訛り。「ブレア・ラビット」は、「うさぎどん」とも訳されています。
利口でいたずら好きなブレア・ラビットが、キツネやオオカミをやり込めます。
このお話は、もともと、ジョージアのプランテーションで、奴隷のストーリーテラーたちが語っていたもの。
アトランタのジャーナリストであったジョーエル・チャンドラー・ハリスは、自身も大農園主の元で住み込みの印刷工兼見習記者として働いていた経験があり、黒人たちとの交流から、これらのお話を『リーマスじいやの物語』としてまとめました。
このシリーズは大変な人気となり、「アメリカのイソップ」として世界に広く知られています。
リーマスじいやは、奉公先の白人の男の子に毎晩お話を語って聞かせます。
男の子にお話をせがまれるリーマスじいやは楽しげで、著者は意図しなかったかもしれませんが、奴隷制が良いものであったかのような印象を与えます。
一方で、この本が存在しなければ、ブレア・ラビットのお話は現在まで残らなかったかもしれません。
“Brer Rabbit Retold” の著者、アーサー・フラワーズは、アメリカのデルタ地区出身のアフリカ系アメリカ人作家で、吟遊詩人でもあります。
子どもの頃から、ブレア・ラビットの話を聞いて育ち、ずっと自分の手でこれを書き直したいと考えていました。
『リーマスじいやの物語』では、口承民話の一部が省かれています。本来のお話の精神性を取り戻したい思いがありました。
インドのチェンナイを拠点とする出版社タラブックスは、アーサー・フラワーズと The Brer Rabbit Retold Project を立ち上げました。
イラストを手掛けたのは、西インドに伝わる礼拝用の布、マタニパチュディの作家ジャグディーシュ・チータラーです。
ハンドメイドの絵本で、糸で綴じられています。表紙は布。印刷はシルクスクリーンで、とてもゴージャスです。
さらに、フラワーズがインドの若いミュージシャンたちの演奏に合わせて物語を朗読した音源が、CDで付属しています。
リズミカルで、躍動感があり、素晴らしい語りです。昔の人たちは、こんな風に歌って語り継いでいたのでしょうか。
アーサー・フラワーズは、省かれていたお話を付け加えるだけでなく、新しいものも追加しました。
ブレア・ラビットが宇宙船で寝過ごしてしまって、そのまま宇宙に行くお話。とっても楽しくて、私はこのお話が大好きです。
また、ゾーラ・ニールハーストンが語ったという John the Conqueror の伝説も登場します。
ムチで打たれそうになった、赤ちゃんを背負った女性が空に舞い上がり、周囲の奴隷たちも次々に舞い上がり、そのまま祖国に戻ったというお話。
ブレア・ラビットは置いてけぼりになりますが、Conqueror に残った人々を助けるように諭されます。
Conqueror は hoodoo 、アフリカ系アメリカ人の民話に登場する精霊です。
神話好きなので、ゾーラ・ニールハーストンの本にも興味が湧きました。
以前、ある翻訳家の方の講演会で、「日本では、黒人奴隷の言葉を東北の方言で訳す習慣があって、黒人の方にも東北の方にも失礼だ」という話を聞いたことがあります。
それはその通りで、まったく気づかずにいたことが衝撃的でした。
無意識で他人を貶めるようなことをできるだけ避けるためにも、「知る」ことを大事にしていきたいと思っています。
お話を通して、いろいろな人々の思いを知ることができたら素敵ですね。
Brer Rabbit Retold
by Arthur Flowers, illustrated by Jagdish Chitara
Publisher: Tara Books
by Arthur Flowers, illustrated by Jagdish Chitara
Publisher: Tara Books
谷津 いくこ
絵本専門士
絵本専門士
絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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